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パネルディスカッションと講演

2005年3月20日(日) 場所:理学部3号館7階大講義室

午前の部:10:30−12:30

物理学科: 曹 基哲 「極微の構造と宇宙の進化」
 物質の構造や物体の運動を支配する法則を、色々なスケールで理解するのが物理学の目標です。人々は「物は何からできているのだろう?」という素朴な疑問から原子、原子核、電子等々、より基本的な(小さな)構成要素を見つけて来ました。現代では、この疑問に対する答えを探す使命を担っているのが素粒子物理学という分野です。この分野の先端的な研究の現状を紹介しながら、なぜ小さな小さな物を調べる素粒子物理学が壮大な宇宙の進化に関わるのか、について述べたいと思います。

化学科: 森 義仁 「リズムの不思議」
 リズムを刻む化学反応をご存知ですか?ある種の化学反応では、それが進むにつれて、反応溶液の色が交互に変わるのです。生物には心臓の拍動などリズム現象は決して珍しいものではありませんが、化学の世界では、発見当初、信じてもらえなかったようです。現在では研究者も少なくなく、1977年にはプリゴジーヌとう学者がノベール化学賞を受賞しています。そこで発見当初の事情、また研究者がリズム現象に対してどのような興味を持っているのかをご紹介したいと思います。

生物学科: 最上善広 「生物のパターン形成」
 生物の作る(空間)パターンは細胞や生体物質等のミクロな単純要素が寄り添うことによって発現する.この集合を律するのは単純な決定論的法則なのだろうか.生体システムは一般に,個々の構成要素のレベルでは極微弱な応答(反応)が,要素間の協同作用と,その産物である動的不安定性を通じて,集団としての「思いもよらない特性」が発現されるという特性を持つ.このような,いわば自発的な発展の例としての(空間)パターン形成を取り上げる.時間的な余裕があれば,(時間的)パターン形成にも触れる.



午後の部:13:30−15:30

情報科学科: 竹尾富貴子 「フラクタルにおける階層構造」 (13:30-14:15)
 自然界の法則の理解が進むにつれて、秩序や規則性が混沌や不規則性と深くかかわっ ていることが分かってきました。単純なものから複雑なものが生まれる現象、逆に複 雑なものが突然単純になる現象、そして、秩序と無秩序がいくらでも小さなスケール にまで混在するフラクタルとよばれる構造などが現在注目されています。コンピュータの発展により、階層構造による単純なものから複雑なものへの変化の様子を視覚化することができるようになり、さらにフラクタルの理解が深まりました。このフラクタルの階層構造等について紹介します。

数学科: 戸田正人 「ポアンカレ予想と3次元多様体の不可逆的な変形」 (14:30-15:30)
 クレイ数学研究所が提示した懸賞金付き未解決問題としても有名な「3次元ポアンカレ予想」がロシアの数学者ペレルマンにより解決されたというニュースが一昨年アナウンスされました。証明はリッチフローという微分方程式に従い3次元多様体(宇宙)を変形して多様体の崩壊の様子を調べるという手法です。リッチフローは熱の拡散を記述する方程式に似た性質を持った方程式で,均一に分布しようとする熱の性質と同じように,より均一な美しい「形状」に多様体を変形していく不可逆な現象をあらわしています。現在この証明の詳細を検証している戸田助教授にやさしく問題の背景から紹介してもらいます。