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特許審査・審判業務について
(平成22年5月掲載)


深草 亜子
特許庁審判部第22部門審判官

 「特許審査・審判業務について」(平成22年5月掲載)

 私は学部4年生と修士課程の2年間、生物化学研究室(当時)に所属して小川温子先生にご指導いただきました。研究テーマは、植物由来糖タンパク質の糖鎖構造解析でした。修士1年の夏に国家公務員T種試験に化学区分(当時)で合格し、修士課程終了後、経済産業省の外局である特許庁に入庁し、現在まで勤務を続けています。
 産業財産権制度(特許、実用新案、意匠、商標制度の総称)は、発明等の知的創造の成果を保護・活用し、産業の発展に寄与することを目的とするものです。特許庁は、総務部、審査部、審判部等から組織され、(1)特許権等の適切な付与、(2)産業財産権施策の企画立案、(3)国際協力・交渉、(4)産業財産権制度の見直し、(5)産業財産権情報の拡充等、我が国産業の発展に向けた取り組みを積極的に進めています。出願については、審査部において厳正な審査を行って権利を付与し、審査結果に対する不服については、地方裁判所に代わって第一審としての機能を有する審判部が、民事訴訟法に準じた厳格な手続きで審理しています。
 私は、入庁してバイオテクノロジー・食品を担当する審査室に配属され、4年間は審査官補として指導審査官と共に、その後は審査官として独立して審査を行ってきました。昨年から、2年間の予定で審判官として3人合議制の審理に携わっています。今後はまた審査官に戻り、その後審判官となるのが、技術系職員の一般的な職歴です。
 審査業務は、基本的に、出願された発明内容を理解→特許公報・学術文献をサーチして先行技術を把握→法律に基づいて特許性の有無を判断し(出願前に同じ技術思想がなかったか、出願時の技術から同一分野の研究者が容易に考え出すことができたものではないか、発明の内容が適切に記載されているか等)、その理由を出願人に通知→特許権の付与又は拒絶を決定、と進みます。書類に基づいて判断するデスクワークで、実験を行うことはありません。出願内容と先行技術を理解する際には技術的素養が、それに基づいて特許性の判断を行う際には法律的素養が必要です。審査を担当する技術分野は広いので、研究室でのテーマが直接関連する出願を審査することは少ないですが、関連文献を読み、仮説を立て、実験をしてデータを集め解析し、これを繰り返して論文にまとめるという一連の経験をしていることが役に立っていると感じます。法律の知識は、学生時代にあまり縁がなくても、入庁後の研修で身につけることができます。開発された一つの技術が特許になるのかならないのかを決定するという責任は重大ですが、それだけにやりがいがあります。
 特許庁では、審査官・審判官として任用されるために必要な研修の他、様々な法律研修、技術研修、語学研修、行政研修等が充実しており、スキルアップが可能です。私も、国内留学制度で、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科の修士課程に1年間在籍しました。社会人生活を経験してからの学生生活は、集中して研究や講義に取り組むことができ、貴重な経験となりました。
 また、職場には女性職員も多く、産休・育休の取得も一般的です。私も2度の育休を取得し、周囲のご協力を得て、子育てしながら勤務を続けられています。
 化学科を卒業した後の進路としては少数派ですが、様々な技術的知識を吸収し続けることができて、私生活との両立もできて、なかなかおもしろいところだと思っています。つたない紹介ではありますが、これをきっかけに興味をもっていただけましたら幸いです。

参考: 特許庁ホームページ
     国家公務員試験採用情報NAVI


(深草亜子様ご紹介)
H 5年3月 学部卒業
H 7年3月 修士課程修了
H 7年4月 特許庁入庁 現在に至る