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卒業生・修了生と現旧教員でつくる会です。
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桜化会(OUCA)は、お茶の水女子大学化学科・関連大学院の卒業生・修了生と現旧教員でつくる会です。

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過去の経験は将来のために
(平成22年5月掲載)


佐藤 明子
独立行政法人 科学技術振興機構 理科教育支援センター 主任アナリスト

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photo お茶の水女子大学サイエンス&エデュケーションセンター講師在職中、生物学科の室伏きみ子教授(元副学長)のプロジェクトの一員として、8カ国の12大学を訪問し、大学が初等・中等教育にどのように貢献しているかを調査しました。写真はシンガポール国立大学ラッフルズ博物館、コペンハーゲン大学ニールス・ボーア研究所を訪問した時のものです。
 お茶の水女子大学理学部化学科を卒業、続いて、大学院修士課程を修了後、(社)化学情報協会に勤めました。二十余年、勤務しましたが、一番長く携わったのは、化学文献データベースの作成で、日本で発行された論文や特許の情報を、アメリカ化学会発行のChemical Abstractsデータベースに入力する仕事でした。今はSciFinderなどのオンラインサービスで瞬時に情報検索ができますが、私が勤め始めた頃は、毎週発行される冊子体のChemical Abstractsが研究者に必須のツールでした。世界中の科学者・研究者にとって、私達の作るデータベースはなくてはならないもの、このデータベースによって科学・技術が進歩するという自負がありました。在職期間中に、データベース中の日本の情報が欧米の情報並みの速報性、品質へと向上しました。私は情報分析部長でしたが、若い仲間の努力と工夫とチームワークのお蔭と感謝しています。
 世紀の変わり目に、ふとしたきっかけから、科学教育の世界に転向しました。母校で学位(博士)を取得し、お茶の水女子大学サイエンス&エデュケーションセンターでの講師等を経て、現在(独)科学技術振興機構理科教育支援センターで、主任アナリストとして調査研究に携わっています。肩書きなどの全てを元の職場に置いての出発でしたが、前の仕事で身についたものが役立っていることを実感しています。世界の情報とユーザを相手にした経験を生かして、科学教育の仕事は教科書の国際比較から始めました。
 大学で化学情報の授業を担当して若い学生さんと勉強する機会に恵まれたのも、高校生の課題研究の一助となるようにデータベースや要旨集のフォーマット作りに積極的に関わることができるのも、化学情報の仕事が生きているからだと思っています。また、かつて仕事で知り合った海外の友人が、今の仕事を応援してくれるのも嬉しいことです。そして、科学教育の世界は教育学を含む様々な分野の人の集まりですが、その中で、化学を専門としていることが私の拠りどころになっています。
 ところで、仕事では自分がいなければ誰かが代わりをやりますが、家族にとっては自分の代わりはいないと思い、家族のことは大事にしています。そして、仕事に励んでこられたのは家族の応援のお蔭と思っています。
 情報の世界には技術的な国境がありません。グローバル化が進み、教育の中心である子ども達は、将来、ある意味で国境のない世界に生きていくということを、科学教育に携わる者として、強く意識しています。
 これからも、子ども達が自然のしくみを理解して次の時代を担っていけるよう、少しずつでもできることをやっていきたいと思っています。