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2003. 9.20 OUCA講演会 「特許をめぐって」

―― 特許の意義と利用方法 〜 特に企業の立場から ――


松尾 由紀子
S56年化学科卒
三菱化学(株)知的財産部

 最近は「特許」に関する報道が増えています。特許とは何でしょうか?

1. 特許とは?
 特許権は、発明等の知的創造物についての権利である「知的所有権」の一つであり、「新しく、有用な発明を公表した人に対して、国が公表の代償として与える、一定期間(原則20年)の独占権」である。特許制度は、発明の保護と利用によって産業発達に寄与することを目的としている。
 特許になる発明は、自然法則を利用した技術的思想で、更に次の3条件が必要である。
新規性:新しいこと。
進歩性:従来の技術から容易に考えられないこと。
産業上の利用可能性。

2. 企業にとっての特許の意義
 企業は特許により法的参入障壁を築き、自社技術に基づいて他社への優位性確保を図る。
つまり、研究開発→工場建設→商品販売→利益→再び、研究開発いうサイクルにより投資を回収する手段として、特許は重要である。

3. 特許の利用法
 特許権の主な利用法は次の3つである。
(1)市場を独占し、企業利益の最大化に用いる。
(2)多数の特許を獲得し、会社同士でお互いにライセンスをする(クロスライセンス)。
製品に多数の特許が関係する機械、電気分野に多い。
(3)特許ライセンスにより、収入を得る。但し、ライセンス成立確率は非常に低い。
 一方、特許は出願後1年半(公開公報)、審査パスした後(特許公報)の2種類の公報として公表され、これらの公表を企業は次のように利用する。
権利書: 他社の権利を知る重要な情報源。
技術文献: 特に1年半で公表される「公開公報」は、将来の重要特許を含み、また、他社の技術開発動向を知る重要な情報源。

4. 最近の特許関連のトピックス
(1)元従業員からの会社に対する訴訟
“職務上で行った発明を会社に譲渡した場合に、従業員は会社から相当の対価を受ける権利を有する”との特許法での規定に基づき、元従業員による訴訟が増えている。
(2)新規性喪失の例外
“特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもって発表した場合には、新規性を失わなかったとみなす”規定が特許法にあり、一昨年末から学術団体として大学も認められるようになった。

5.最後に
 今後、特許等の知的創造物の重要性は増すと考えらる。但し、製品、商売によっては重要性は大きく異なる。