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2007. 6.23 OUCA講演会 「日本の教育、外国の教育」

おばさん先生の学校小咄


村上 慶子
S53年化学科卒
横浜市立牛久保小学校教諭

1年生で行われる「給食参観」。
そこでは、だぶだぶの白衣を着て重たい食缶や食器を運んだり、みんなの給食を配ったりする子供たちの姿と、安全に気を配りながら懸命に指導する担任の姿を見ることができる。
以前は担任の大変さを実感して労いの言葉をかけてくる保護者が多かったが、最近はビデオや携帯を片手に我が子の姿を写すことに熱中する保護者が目立つようになった。
こういうことからも、学校に対する意識が大きく変わってきていることがわかる。

指導要領が改定されたことに伴い、学校での指導内容も大きく変わってきた。

平成4年度から実施された学習指導要領の「理科」では、その特徴を『人間カリキュラム』とうたっている。
改訂の要点には、「人の体のつくりと働きにかかわる内容の充実」が明記されており、第3学年から第6学年にかけて「人間」について系統的に扱い、生物を愛護し、生命を尊重する態度を育てることをめざしていた。

特に、第5学年の「人の発生と成長」では、1mmにも満たない受精卵から命が始まること、3億もの精子と400個の卵子の中から1組が選ばれることにより今の自分があること、数cmの胎児の心臓が鼓動を始めることなど、生命誕生のすばらしさ、不思議さを学習する。
さらに、保護者に協力を求め、子どもに宛てて手紙を書いてもらう。
産まれるまでや産まれたときの思いが綴られた手紙を読んで、子どもたちは自分の命がかけがえのない大切なものであるということを改めて実感することができる。
こんな授業を展開してきた。

ところが、その10年後に実施された現行の指導要領では、人に関する内容が大幅に削除された。
第5学年では、人の誕生とメダカの誕生のどちらかを選択して学習することになっている!
こんなことで本当に生命を尊重する気持ちを育むことができるのだろうか。

子どもは本当にすばらしい。
いろいろな体験や学習をしていく中で目を見張るような成長を見せてくれる。
しかしながら、子どもたちを取り巻く環境や社会は大きく変わってきている。
子供たちに今本当に必要なものは何かということを皆で考え、健やかな子供の成長を願って取り組んでいきたいものである。