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2007. 6.23 OUCA講演会 「日本の教育、外国の教育」

国際比較で見た外国の科学教育


佐藤 明子
S50年化学科卒、S52年修士課程修了
お茶の水女子大学(大学院人間文化創成科学研究科研究院)研究員

 1998〜1999年の学習指導要領の改訂により、中学の理科からイオンが電子や周期表と共に消えた。
 「それまでイオンを使って学習していた事柄はどうするのだろう?海外ではどのように学習しているのだろう?」という衝撃的な疑問から、海外11か国の教科書を調べてみた。
 他の国では、揃って、原子の構造やイオン、種類の違う原子は何が違うのかなどの基本を学習している。そして、イオンを使って、酸・塩基、電気分解、電池など様々なことを学習している。
 日本の子どもだけ知らなくてよいのか?地球上の人の動きはますます盛んになるのに。という思いから、科学教育の国際比較を始めた。

 海外の科学教育を垣間見てきて、「えっ!外国ではそうなんだ!」と印象深かったことを、いくつか紹介する。

「難しい事を一度に勉強するのは大変だから、今のうちから少しずつ教えるの」
 アメリカ オハイオ州のミドルスクールの教員に、原子の構造、周期律、イオン、酸・塩基、電気化学などについて、生徒が理解しやすいかを質問したところ、イオンの学習は一般的には難しいと考えられていることが分かった。しかしそれでも、原子の構造・イオンはミドルスクールで導入すべきと考える教員が多かった。理由は、「難しい事を一度に勉強するのは大変だから、今のうちから少しずつ教えるの」であった。

「科学と技術についての学習」
 「科学は、自然界の理解のための研究と知識の集積、そして、技術は、科学の実生活への応用」などのように、海外では科学と技術を区別して学習している。そして、科学の進歩と技術の向上は相互に貢献していること、技術の進歩により人間の生活が向上したこと、さらに、技術が問題解決に役立つときにはいくつかの選択肢がありうること、など、科学と技術の本質について学習している。 日本では、殆ど扱われていない。

「研究者が初等・中等教育に関わるのは当たり前」
 海外での研究者の初等・中等教育現場でのアウトリーチ活動の実態調査を行うため、欧米等の大学を訪問した。ウプサラ大学の副学長の部屋には子ども達に科学を伝えるために使うおもちゃが転がっていた。大学院生も積極的にアウトリーチに参加している。副学長曰く、「研究者が初等・中等教育に関わるのは当たり前。自分が大学院生のころから、研究以外の活動に参加していた」。 年月を重ねてアウトリーチが文化になっているのだと感じた。