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TOP講演会>日本における医薬品の承認申請―新しい医薬品が世に出るまで―

第2回 お茶の水女子大学ホームカミングデイ(化学科共同企画)

2008年 5月31日(土)

日本における医薬品の承認申請 ―新しい医薬品が世に出るまで―


山中 裕子
S48年化学科卒
シミック株式会社 信頼性保証部

 新しい医薬品が世にでて一般の病院で処方されるようになるまでには長い年月と費用がかかる。
@基礎研究: たくさんの薬物の中から薬効のある薬物を探しだす
A前臨床試験: 基礎研究の結果、医薬品としての可能性のある薬物を動物に投与して吸収・代謝・排泄・臓器内分布等を調査する
B臨床試験: 人に使用しても安全であり、医薬品として有益だと想定されたものだけを人に投与して安全性・有効性を調査。
承認申請のために行われる臨床試験を「治験」という
C申請・承認: 治験の結果を当局へ申請、認められれば承認
 このステップを経て、医薬品は認可され市販されることになるが、10〜15年の年月と、膨大な費用がかかることになる。
 また、承認がおりなければ医薬品として市販することはできず費用だけがかかることになるので、製薬会社は申請に関しては必死とならざるを得ない。
 以前は申請に関するノウハウは製薬会社だけのものであり、他業種の参入は容易ではなかったが、現在では製薬会社のみならず、醸造(酒類製造)、製菓、食品、化粧品、繊維などの異業種の企業が参入している。

 日本では、様々な要因から承認申請にかかる時間が欧米に比較して非常に長く、「ドラッグ・ラグ」と呼ばれる、欧米ではとっくに発売され効果も確認できているのに、日本では承認されていないので使用できないということが問題となっている。

 相次ぐ製薬会社の吸収・合併による人材の不足や、異業種の会社での新薬開発のノウハウの不足を補うために、新しいビジネスが展開してきた。CRO(Contract Research Organization: 製薬会社等の業務を契約によって受託代行)やSMO(Site Management Organization:医療機関の業務を契約によって受託代行)などの企業がある。
 モニターと呼ばれる医療機関と製薬会社の仲立ちをする者、治験コーディネーターと呼ばれる医療機関で治験業務の一部を行う者等が、新しい職業として発生してきている。
 日本の新薬の許可申請の現場で、より良い医薬品を早く世にだすため、ドラッグ・ラグを解消するために、努力しているたくさんの人たちがいる業界は興味深いものがある。