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2013. 6.8 OUCA講演会

欧州2か国での研究生活と日本との違い


米田 敦子
H4年化学科卒、H6年修士課程修了、H9年博士課程修了
東京薬科大学生命科学部 助教

 2001年夏から昨冬まで約10年間、欧州2カ国(英国とデンマーク)の大学で研究と教育に携わり、渡欧前に日本で経験していたこととの違いについて感じたことを紹介しました。最初に、私の研究テーマ(細胞が動く現象を分子レベルで理解する)を簡単に紹介したあと、ロンドンとコペンハーゲンでの生活についてお話しました。ロンドンでは、Imperial College London(以下IC)の医学部基礎系学科で博士研究員として研究し、デンマークではコペンハーゲン大(以下KU)の医学部分子病理学科で任期付き准教授として研究と教育に携わりました。以下に特徴的な点を列挙します。

研究環境:共同がキーワード?
・偶然にも、両大学の研究室(ラボ)が、近年増えてきたオープンな環境(いくつかのラボと大フロアを共用)に設計された新築ビル内に位置しました。このような環境のためか、多くの機器(比較的安価なものまで)の頻繁な貸借、大型機器の共同化、汎用試薬などの共同試薬化と、最初はこんなものまで?!と驚きましたが、そのシステムの便利さに大変助けられました。両大学とも学科単位でラボマネージャーが存在し、共同機器のメンテナンスなど効率のよい研究環境のサポート体制があります。
・2校とも規模が大きいおかげか、最先端研究技術サポートが進んでおり、画像解析、分子量解析など多くのセンターが存在し、専属の研究者が技術指導や受託解析などを担当しています。
・学会以外にも、学内外の情報交換の場(セミナーなど)が多く、欧州内ときには北米からの研究者の招待講演を毎週聞く機会があります。
・ICは当然ですが、KUでも教員、博士研究員、博士学生が世界中から集まっている研究所(BRIC: Biotech Research and Innovation Centre、我々のラボも所属)があり、所内の研究発表、会議、事務手続きはすべて英語で行われています。

教育:北欧の大学も国際化を意識
・デンマークでは(公用語はデンマーク語ですが、マルチリンガルであるため、英語による授業に支障はありません。)、英語だけで講義実習が開講される修士課程が存在します。また、外国人教員が増え、他の学科でも英語による授業が増え、私も内分泌病理学、細胞生物学の講義、心疾患、腫瘍、慢性炎症についてのケーススタディの授業を担当していました。
・両学とも、ほとんどの博士学生が給料を得ています。KUでは、契約書に授業をする義務があることが明記されており、実際に博士学生が学部学生の授業を担当する場合があります。私が指導していた学生も行いました。
・デンマークでは、家庭をもっている学生が多く、産休、育児休暇(男女ともに)をとるケースが多いのも特徴です。私が指導していた学生も出産し、9か月の育児休暇をとりました。

注:どの国の研究・教育機関でも、その規模等により状況は異なりますから、画一的に、どの国がこうだとまとめるつもりはありません。日本にも、上記に相当する、またはそれ以上のサポート体制、研究・教育環境にある機関は多いはずです。