藤代 一成(ふじしろ いっせい) 数理自然情報科学講座 教授(講座代表)

[ Japanese / English ]

私の研究室では, 複雑系の現象を解明していくため, 画像情報論(ビジュアルコンピューティング)の立場から 研究を進めています. 複雑系の研究では, 高度な数値シミュレーションや高精度のデータ計測装置から 日常的に大量の数値データが得られるわけですが, その中に潜んでいる未知の情報を わかりやすくかつ効果的に呈示できるような インフォマティブな画像を, どのようにしたら生成することができるかを模索するのが 私の研究室の中心的なテーマになっています [1].

例えば上図は, 平成10年度から複雑系科学講座の 平野 恒夫 教授と 共同研究がスタートした「分子動力学解析のための可視化システム」 VisMDの画面例です. ここでは,星間塵形成シミュレーションの分子動力学シミュレーション の結果を表示しています[2]. このように, 多数の動的分子が詰まった系をアニメーション表示して, 個々の分子によって異なるダイナミクスを効果的に表現する際に, 愚直にポリゴン近似した球に3次元的なシェーディングを施していたのでは, いくら現状で利用可能な最高レベルのGWSを用いても, 理論的に興味ある個数の粒子を用いた系の描画を行うには 速度的に追いつきません. そこで,どこから見ても球の投影像が円盤になることをヒントとして, CG応用の世界でよく使われてきている ビルボード(常に視線方向に対して垂直に立つ2次元の薄い板) の円盤を用意し, そこに光源との相対的位置関係や投影に関連するパラメータ群を 考慮した陰影のテクスチャを貼り付けることで, ポリゴンレンダリングと同等の奥行き感を保った映像を 高速に生成する方式を提案しています. この方式の採用によって, 現システム上では, 少なくとも千個オーダの粒子系のリアルタイムアニメーションを 中程度の描画性能をもつGWS上で実行することができるようになりました[2]. 結果として, 観察者は自分の見たいところから現象を何度も繰り返し 視覚的に確認できることになり, これまで視覚化されなかった重要なメカニズムの発見 につながるよう期待しているところです.

今後も,さまざまな複雑系の解明に資することの できるビジュアルサイエンスを目指したいと考えています.

【参考文献】

  1. 藤代,茅:「コンピュータデータビジュアリゼーション」, 日本AEM学会誌,vol.6,no.3,pp.225-229, 1998年9月
  2. 藤代:「画像情報による新しいメカニズムの解明」, SGI-CRAY Scientific World 「複雑系科学の可能性〜お茶の水女子大学〜」, vol.28,no.10,p.20,1998年10月
  3. 北山,藤代 ,平野:「大規模球群リアルタイムアニメーションのための テンプレートテクスチャの部分マッピング」,情処研報98-CG-91-4,pp.17-22,1998年8月
  4. 北山,藤代,平野,奥田:「ビルボードを用いた大規模球群可視化アニメーショ ン」, 日経サイエンスコンピュータビジュアリゼーションシンポジウム'99論文集, 東京,1999年6月,pp.61-64

【キーワード】

サイエンティフィックビジュアリゼーション; 3次元コンピュータグラフィックス; パーティクルシステム; ビルボード処理; 分子動力学

【在学生からのメッセージ】

立野 玲子 数理自然情報科学講座藤代研究室 平成9年度入学(平成7年度生)
(財)東京都医学研究機構 東京都臨床医学総合研究所勤務

複合領域科学専攻の博士課程3年に在学しています.働くなかで出会った分野を 深めたいと願い,入学しました.今年は最終学年を迎えて,研究室と職場を行き 来することが増え,ますます大学と勤務先の近さに感謝しています. 専攻は新しく育ちつつある分野なので,先生方も若く,若い学生と相まって フレッシュなエネルギーに触発されています.職場では,周辺分野の動向を つかむことなどには,なかなか時間をさけませんが,さすが大学では体系的な 知識も修得できるよう,先生方が配慮してくださって,大学の良さを痛感しています.

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