ページの本文です。

学生が第一著者の学術論文

2024年3月26日更新

2010年以降に各研究室から発表された「学生が第一著者の学術論文」の情報をまとめています。
太字+下線が、生物学科の研究室所属の学生です(2021年以前は、第一著者の学生のみ、太字+下線の表示です。2022年以降は関わった学生全員に変更しました)。
論文発表時に既に卒業・修了済みの学生であっても、その研究への貢献が主に学生時の成果である場合は、その研究室所属の学生として扱っています。

詳しい内容については、各教員や研究室のHPもご覧下さい → 教員紹介(写真有り)  教員紹介(詳細)
学生の受賞に関する情報はこちら → 学生の受賞

2024

Mayu Shibata, Xingcheng Lin, José N. Onuchic, Kei Yura, Ryan R. Cheng (2024) Residue coevolution and mutational landscape for OmpR and NarL response regulator subfamilies. Biophysical Journal, 123, 681-692.  doi:10.106/j.bpj.2024.01.028 https://doi.org/10.1016/j.bpj.2024.01.028 (著者に入っている学生:柴田眞侑さん) この研究では、DNAに結合して転写を制御するバクテリアや植物のタンパク質(転写因子)に関して、その制御構造を計算生物学の手法で明らかにすることをめざしました。二成分制御系とよばれている転写因子群は、N末端側ドメインがリン酸化され、その情報がC末端側のDNA結合ドメインに伝達されることで、外部刺激への応答を実現しています。この分子的/原子的機構は長く研究されていますが、未だに不明な点が多いです。そこでゲノム塩基配列決定によって明らかになった大量のアミノ酸配列情報を利用し、空間的に近接するアミノ酸残基を推定することで、この転写因子が取り得る構造(ドメインの立体配座)を推定しました。実験的に明らかにすることが難しいとても短時間しか現れないような配座を、長い時間の進化によって刻み込まれたアミノ酸配列の違いから見出すことに成功しました。この研究は興味深い結果を含んでいることから、同号のNew and Notable(https://doi.org/10.1016/j.bpj.2024.02.014)にも取り上げられました。(由良)

2023

Serika Yamada, Hiromu Monai (2023) Real-time Analysis of Gut-brain Neural Communication: Cortex wide Calcium Dynamics in Response to Intestinal Glucose Stimulation, J. Vis. Exp. (202), e65902, doi:10.3791/65902 (2023).
https://www.jove.com/t/65902/real-time-analysis-gut-brain-neural-communication-cortex-wide-calcium
(著者に入っている学生: 山田芹華さん)
この研究では、腸にグルコースを注入した後、脳のどの部分がどのように活動するかを調べるための新しい方法を開発しました。特別に遺伝子改変されたマウスを使い、マウスの頭蓋骨を傷つけることなく、脳の表面にあるカルシウムイオンの動きをリアルタイムで見ることができる技術です。これにより、腸にグルコースが入った後、脳の反応をより詳しく理解することができます。この技術は、腸と脳の相互作用を研究するための新しい方法を提供します。(毛内)

Misaki Endo, Mari Gotoh, Mari Nakashima, Yuka Kawamoto, Shiho Sakai, Kimiko Murakami-Murofushi, Kei Hashimoto, Yasunori Miyamoto. (2023)“2-Carba cyclic phosphatidic acid regulates blood coagulation and fibrinolysis system for repair after brain injury” Brain Research 1818: 148511
https://doi.org/10.1016/j.brainres.2023.148511
(著者に入っている学生:遠藤美沙紀さん、中島麻里さん、川本祐華さん、坂井志穂さん)
我々の以前の研究において脳の損傷時の出血において、生理活性脂質である環状ホスファチジン酸が止血効果を発揮することを報告していたが、その止血機構が未解明であった。本研究では、環状ホスファチジン酸がフィブリン形成や血小板凝集を引き起こすことにより、止血されることをRNAseq解析、損傷部位の組織解析、損傷部位漏出解析を通して明らかにした。さらに、出血成分の環状ホスファチジン酸により早期に分解されることが、線溶系関連因子の発現の環状ホスファチジン酸による促進効果であることも明らかにした。本研究は、環状ホスファチジン酸の止血抑制機構を明らかにすることにより、環状ホスファチジン酸が治療薬としての有効であるという新たな知見を提供している。(宮本)

Aoi Gohma, Naoya Adachi, Yasuo Yonemaru, Daiki Horiba, Kaori Higuchi, Daisuke Nishiwaki, Eiji Yokoi, Yoshihiro Ue, Atsushi Miyawaki, Hiromu Monai (2023) Spatial frequency-based correction of the spherical aberration in living brain imaging. Microscopy, dfad035.
https://doi.org/10.1093/jmicro/dfad035
(著者に入っている学生: 郷間葵さん)
生きた状態の脳を深くまで鮮明に観察するため、脳研究の分野では二光子顕微鏡と呼ばれる特殊な顕微鏡が広く用いられています。しかしながら、生体組織は散乱が大きく、顕微鏡から照射したレーザーが一点に集光しない「球面収差」と呼ばれる光学エラーが生じ、ぼやけた像が得られやすいのが難点です。私たちはこれまで、このエラーを効率的に補正し、ぼやけの少ない画像を撮影するための顕微鏡システムを産学連携により開発してきました。本研究では、さらにこの顕微鏡システムの改良を行い、高速かつノイズ頑強性の高いアルゴリズムの開発と実装を行いました。さらに、それを顕微鏡システムに実装することで、生体組織深部や老齢化した生体脳組織のように、散乱によるノイズの影響が無視できないほど大きい生体試料においても、安定してぼやけの少ない画像を撮ることが可能であることを実証しました。(毛内)

Yukie Mihirogi, Michika Kaneda, Daisuke Yamagishi, Yuu Ishii, Shinichiro Maruyama, Sumika Nakamura, Natsuno Shimoyama, Chihiro Oohori, and Masayuki Hatta (2023) Establishment of a New Model Sea Anemone for Comparative Studies on Cnidarian-Algal Symbiosis. Zoological Science 40: 235-245
https://bioone.org/journals/zoological-science/volume-40/issue-3/zs220099/Establishment-of-a-New-Model-Sea-Anemone-for-Comparative-Studies/10.2108/zs220099.full
(著者に入っている学生: 三尋木幸恵さん、金田海愛さん、中村澄香さん、霜山菜都乃さん、大堀智博さん)
サンゴの白化現象から褐虫藻との共生のしくみの解明が注目されている。サンゴは扱いが難しいため、セイタカイソギンチャクがモデル動物として研究されている。しかし1種類では比較研究ができない。そこで新たにアオホシイソギンチャクのクローン株を樹立し、効率的な人工白化方法を見つけ、褐虫藻との関わりについて比較研究をおこなった。口で飲み込む段階と体内で増殖する段階において、特定の種類の褐虫藻を保持する特異性があることを明らかにした。(服田)

Hiina Watanabe*, Ayaka Fukuda*, Natsumi Ikeda*, Maoko Sato, Kei Hashimoto and Yasunori Miyamoto. “Syndecan-3 regulates the time of transition from cell cycle exit to initial differentiation stage in mouse cerebellar granule cell precursors” Brain Res. (2023) 1807, 148317. *渡邉さん、福田さん、池田さんの第一著者としての寄与は同等, (宮本研HP )  https://doi.org/10.1016/j.brainres.2023.148317
(著者に入っている学生: 渡邊雛さん、福田彩華さん、池田夏実さん、佐藤真生子さん)
本研究では、小脳形成時において主要な神経細胞である顆粒前駆細胞の増殖、細胞周期脱出、分化に対するプロテオグリカンの一つであるシンデカンー3が果たしている役割を解析している。マウス新生仔の小脳形成時における組織学的及び小脳顆粒前駆細胞の培養系を用いた解析により、シンデカンー3が小脳顆粒前駆細胞の細胞周期脱出のタイミングを制御していることを明らかにした。本研究は、小脳形成機構の一端を分子レベルで明らかにしたものである。(宮本)

Serika Yamada, Wang Yan, Hiromu Monai (2023) Transcranial cortex-wide Ca2+ imaging for the functional mapping of cortical dynamics. Frontiers in Neuroscience 17, 176.
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnins.2023.1119793/full
(著者に入っている学生: 山田芹華さん、王岩さん)
細胞が活動した際に生じる細胞内カルシウムイオンの上昇によって蛍光特性が変化するカルシウムセンサータンパク質を、遺伝子に組み込むことによって細胞の活動を可視化することができます。このような蛍光タンパク質genetically-encoded calcium indicator(GECIs)を脳細胞に持った遺伝子改変マウスの生きたままの脳活動は、従来、頭蓋骨に小さな穴を開けて、複雑な顕微鏡を用いなければ見ることができませんでした。しかし近年、遺伝子工学技術の発展により、通常の蛍光実体顕微鏡の下で、頭蓋骨越しに、より広範囲の脳活動をリアルタイムで観察することができるようになりました。この論文では、近年急速に発展している、遺伝子組換えマウスを用いて頭蓋骨越しに脳活動を測定する方法の歴史とその応用をまとめました。(毛内)

Rino Takei, Mari Nakashima, Mari Gotoh, Misaki Endo, Kei Hashimoto, Yasunori Miyamoto and Kimiko Murakami-Murohushi. (2023) “2-carba-cyclic phosphatidic acid modulates astrocyte-to-microglia communication and influences microglial polarization towards an anti-inflammatory phenotype” Neurosci. Lett. (2023) 797, 137063. (宮本研HP ) https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0304394023000174?via%3Dihub
(著者に入っている学生: 武井理乃さん、中島麻里さん、遠藤美沙紀さん)
本研究では、脳の損傷時に発生する炎症などにおいて、グリア細胞間のコミュニケーションがどのようにはたらいているかについて解析している。活性化アストロサイトに対し生理活性脂質の環状ホスファチジン酸を添加し、得られた培養上清をミクログリアに添加したところ、直接ミクログリアに環状ホスファチジン酸を添加した時よりも、顕著に炎症性サイトカイン産生を抑制し、グリア間コミュニケーションのはたらき明らかにした。本研究は、グリアの作用に関する新たな知見を提供している。(宮本)

Asuka Takeda-SakazumeJunko HonjoSachia SasanoKanae Matsushima, Shoji A. Baba, Yoshihiro Mogami, Masayuki Hatta (2023) "Gravitactic Swimming of the Planula Larva of the Coral Acropora: Characterization of Straightforward Vertical Swimming." Zoological Science 40:44–52. https://bioone.org/journals/zoological-science/volume-40/issue-1/zs220043/Gravitactic-Swimming-of-the-Planula-Larva-of-the-Coral-Acropora/10.2108/zs220043.full
(著者に入っている学生: 坂爪(竹田)明日香さん、本庄純子さん、笹野祥愛さん、松島夏苗さん)
ミドリイシサンゴのプラヌラ幼生が上方向または下方向に直進遊泳し、ときおり遊泳方向を反転することを発見した。このような両方向性で反転するような重力走性行動は水棲無脊椎動物では初めての例である。動画解析から遊泳行動を定量的に測定し、遊泳制御の機構を数理的に考察した。サンゴの幼生が分散する過程では鉛直遊泳によって、海底に素早く到達し、また着生に適さない基盤から素早く海面に達して次の分散に向かうという、サンゴの分散に対する新たな視点を提案した。(服田) ⇒ この論文は、BioOne(200以上の学術誌を束ねるプラットフォーム)のTop and Trending Reseach, January 2023 に選ばれました(Marine & Freshwater Biologyのセクション )。 

2022

Ha T. T. Duong, Hirofumi Suzuki, Saki Katagiri, Mayu Shibata, Misae Arai, Kei Yura (2022) "Computational study of the impact of nucleotide variations on highly conserved proteins: In the case of actin" Biophysics and Physicobiology 19, e190025. (由良研ニュースhttps://doi.org/10.2142/biophysico.bppb-v19.0025
この論文は、疾患と関連した変異がアクチンタンパク質の立体構造においては、どのように分布しているのかをバイオインフォマティクス解析した結果を報告しています。一般的には、疾患に関連する変異はタンパク質立体構造の内部やタンパク質相互作用面に多く見られる傾向にあり、タンパク質表面に見られる変異は、疾患とは関係がない傾向にあります。しかし、アクチンタンパク質の場合は、タンパク質表面に存在する変異の多くが、何らかの疾患と関係していることがわかりました。アクチンはタンパク質表面のほとんどすべてが何らかの役割をもっているようです。(由良)

Yoshino HaraYui Otake, Shingo Akita, Tomokazu Yamazaki, Fumio Takahashi, Shinya Yoshikawa, Satoshi Shimada. (2022) "Gene expression of a canopy-forming kelp, Eisenia bicyclis (Laminariales, Phaeophyceae), under high temperature stress" Psycological Research. (嶌田研)  https://www-p.sci.ocha.ac.jp/bio-shimada-lab/
発現遺伝子を網羅的に解析できるRNA-seq解析で,「海の森」を構成する褐藻アラメの高水温適応に関与すると考えられるHSPなどの遺伝子群を検出しました。(嶌田)
⇒ この論文は、第26回日本藻類学会論文賞を受賞しました( http://sourui.org/records/award.html

Linh T Pham, Ko Yamanaka, Yasunori Miyamoto, Hidefumi Waki, and Sabine S. Gouraud. (2022) “Estradiol-dependent gene expression profile in the amygdala of young ovariectomized spontaneously hypertensive rats” Physiological Genetics 54, 99-114. (宮本研HPニュースhttps://journals.physiology.org/doi/abs/10.1152/physiolgenomics.00082.2021
本研究では、心血管機能を制御する中枢に対する、性ホルモンの影響を解析している。女性において閉経後の血圧上昇には、女性ホルモンであるエストロゲンの寄与が示唆されているが、本研究においてエストロゲンの一種であるエストラジオールを、ラットの大脳辺縁系の扁桃体に投与を行い、その効果を解析し、扁桃体における各種遺伝子発現レベルの低下を観察し、扁桃体による血圧制御に寄与することを示唆する結果を得た。性ホルモンが中枢の心血管機能を制御する領域に影響を与える可能性を初めて明らかにした本研究は、この分野の研究推進において大きな貢献を果たしている。(宮本)

Oyama,K., Matsuwaki, I., Ito, M., Iwahori, R., Nagata, H., Nakamura, I., Kondo, A., Kodaka, A., Fuseya, Y., Yamamoto, H., Ueyama, Y., Ide, Y., Kasai, Y., Harayama, S. and Kato, M. Limited fatty acid supply from the plastid and active catabolism of triacylglycerol prevent the accumulation of triacylglycerol in Coccomyxa sp. strain Obi grown under nitrogen-replete conditions. Algal Reserch. (2022) 62:102620.  (加藤研
https://doi.org/10.1016/j.algal.2021.102620
この論文は単細胞のトレボキシア藻であるCoccomyxa sp.Obi株が窒素欠乏時にトリアシルグリセロールを蓄積するときの代謝の動態について、主として14C-トレーサー実験によって解析しました。中央大学との共同研究ですが、14C-トレーサー実験は当研究室で行いました。著者には、2020年度に研究室に在籍した全員である9名の学生、および2名の卒業生が含まれています。(小山香梨さん、松脇いずみさん、伊藤舞花さん、岩堀怜さん、永田榛花さん、中村五十鈴さん、近藤朱夏さん、小高茜さん、布施谷百合香さん、山本悠夏さん、上山結生さん)。お茶の水女子大学のラジオアイソトープの非密封の実験を行う実験施設は2020年秋に閉鎖になりました。施設の閉鎖の期限が刻一刻と迫っていたため、少人数では思うように実験が進まず、研究室のメンバー全員が心を一つにして同じ目的に向かって研究を進め、研究室の学生全員が著者となる論文をまとめることができました。研究室全員が著者になった論文は、私の研究者人生において、最初で最後だと思います。一人の力は小さくても、皆で力を合わせることで大きな成果を生み出すことができると実感した思い出に残る論文となりました。(加藤)

Kanako Chimura, Shingo Akita, Takaya Iwasaki, Atsushi J. Nagano, Satoshi Shimada. (2022) "Phylogeography of a canopy-forming kelp, Eisenia bicyclis (laminariales, phaeophyceae), based on a genome-wide sequencing analysis." Journal of Phycology. (嶌田研
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jpy.13233.
本論文では、様々な機能で海洋生態系を支えている一次生産者の海中林構成種:褐藻アラメにおいて、ゲノムワイドなSNPデータを駆使して日本各地の個体群の遺伝的多様性や遺伝構造を解析し、日本列島における分布変遷史を明らかにしました。様々な系統地理学的・保全生態学的解析を行うことで、海洋保全に有効な知見を世界に発信することができました。(嶌田)

2021

Mari NAKASHIMAMari GOTOH, Kei HASHIMOTO, Misaki ENDO, Kimiko MURAKAMI-MUROFUSHI, Hiroko IKESHIMA-KATAOKA, Yasunori MIYAMOTO. (2021) “The neuroprotective function of 2-carba-cyclic phosphatidic acid: implications for tenascin-C via astrocytes in traumatic brain injury” J. Neuroimmunol. 361: 577749 (宮本研)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0165572821002769  
マウス脳損傷の修復過程において、環状リゾホスファチジン酸である2-カルバ‐環状ホスファチジン酸(2立方センチメートルPA)をマウスに投与して効果を解析した。その結果、神経細胞死の抑制が観察された。この神経細胞死抑制が2立方センチメートルPAによるアストロサイトからの細胞外マトリックス分子テネイシンーCの産生促進によることを見出した。

Yuko OISHI*, Kei HASHIMOTO*, Ayaka ABE, Maho KURODA, Ai FUJII, Yasunori MIYAMOTO.  (*第一著者として寄与は同等) (2021) Vitronectin regulates the axon specification of mouse cerebellar granule cell precursors via αvβ5 integrin in the differentiation stage. Neurosci. Let. 746: 135648. (宮本研)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0304394021000264?via%3Dihub
細胞接着分子ビトロネクチンは、小脳形成時において小脳顆粒前駆細胞の初期分化に関与することを以前明らかにしていたが、初期分化時の何に影響するかが明らかにされていなかった。本研究では、初期分化時に起こる軸索決定がビトロネクチンにより担われていることを明らかにした。

2020

Mayu Shibata, Kohji Okamura, Kei Yura, Akihiro Umezawa, (2020) High-precision multiclass cell classification by supervised machine learning on lectin microarray data. Regenerative Therapy, 15, 195-210. (由良研)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352320420300742 
ヒト多能性幹細胞は、再生医療において要の役割を果たすが、細胞の医療適用にあたっては正常な多能性幹細胞だけを選別する必要がある。この問題を克服するために、細胞表面に存在する糖鎖が細胞種ごとに異なることに注目した。糖鎖種の分布を教師あり機械学習させることで細胞種を分類する方法を開発し、97%の精度で細胞種を分類することができるようになった。実際の臨床での利用にはさらなる高精度の分類が必要だが、糖鎖による細胞種分類が可能であることを示した。

Hosoda, E., and Chiba, K. (2020) Fluorescence Measurement and Calibration of Intracellular pH in Starfish Oocytes. Bio-Protoc. 10, e3778–e3778 (千葉研)
https://bio-protocol.org/e3778
ヒトデ卵の細胞内pHを精度よく測定する方法を開発し、その詳細について報告した

Yuina Wada, Motoko Maekawa, Tetsuo Ohnishi, Shabeesh Balan, Shigeru Matsuoka, Kazuya Iwamoto, Yoshimi Iwayama, Hisako Ohba, Akiko Watanabe, Yasuko Hisano, Yayoi Nozaki, Tomoko Toyota, Tomomi Shimogori, Masanari Itokawa, Tetsuyuki Kobayashi and Takeo Yoshikawa (2020)  Peroxisome proliferator-activated receptor α as a novel therapeutic target for schizophrenia., EBioMedicine. Dec;62:103130. doi: 10.1016/j.ebiom.2020.103130 (小林研)
https://www.thelancet.com/journals/ebiom/article/PIIS2352-3964(20)30506-5/fulltext
統合失調症患者の遺伝子変異中に、PPARαの機能に異常をきたす変異を4種見出した。Pparaノックアウトマウスを作製して表現型の解析を行った結果、PPARαの機能不全が統合失調症の発症リスクを上昇させることを明らかにした。

瀬戸彩映里,秋田晋吾,横山雄彦,菊地則雄,嶌田智. 2020. 紅藻アマノリ類2種における遊離アミノ酸量と培養塩濃度条件との関係. Algal Resources. 13: 103-106.(嶌田研)
江戸時代には流通海苔の主流だったアサクサノリは,現在は絶滅危惧I類に指定され,現在流通している海苔の大半はスサビノリである。アサクサノリのほうが甘くて美味しいという噂と,遊離アミノ酸によって汽水適応している可能性を検証するため,遊離アミノ酸量と培養塩濃度条件との関係を解析した。その結果,アスパラギン酸,グルタミン酸,アラニンなどの甘味・旨味に関与する遊離アミノ酸がアサクサノリで多く,海水培養より汽水培養で多くなった。

千村佳那子,岩崎貴也,永野惇,秋田晋吾,嶌田智. 2020. ddRAD-seq解析を用いた日本沿岸の紅藻マクサの系統地理的解析. Algal Resources. 13: 117-122.(嶌田研)
寒天源藻の紅藻マクサは,最近減少傾向にあり,マクサ藻場の回復・保全に必要性が高まっている。ddRAD-seq解析でゲノムワイドなSNPsデータを取得し,各種系統地理学的解析を行ったところ,海流に乗った分布拡大が示唆され,日本海個体群と分布末端で遺伝的多様性が低く,太平洋側の集団は氷期の影響が少なく,比較的安定した集団として維持されてきたことが示唆された。

大竹佑衣,秋田晋吾,嶌田智. 2020. 異なる地域に生育する褐藻アラメの高温耐性. Algal Resources. 13: 85-90.(嶌田研)
南北に長い日本列島では,1つの種でも各地域の適応:局所適応を考慮して,将来の分布推定や地域毎の保全活動策定を行う必要がある。海の森である海中林を構成する褐藻アラメの福岡産と千葉産の系統保存各株を確立し,Imaging-PAMで光合成の高温耐性能を比較した結果,南限の福岡産は20〜30度で光合成活性が下がらず,一方,千葉産では30度では20度と比較して光合成活性が約半減してしまうことが明らかになった。  

2019

Mika Sakamoto, Hirofumi Suzuki, Kei Yura, (2019) Relationship between conformation shift and disease related variation sites in ATP-binding cassette transporter proteins. Biophysics and Physicobiology, 16, 68-79. (由良研)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophysico/16/0/16_68/_article
ヒト細胞内外に低分子を輸送するABCトランスポーターには、多くの変異部位が知られており、その中には疾患の原因と考えられているものもある。しかしアミノ酸残基の変異がどのようなしくみで疾患につながっていくのはわかっていない。変異部位とABCトランスポータ—の立体構造とダイナミクスを調べたところ、トランスポーターの開閉運動の蝶番となっている部分の変異が、疾患に関係する場合があることがわかった。

Hosoda, E., Hiraoka, D., Hirohashi, N., Omi, S., Kishimoto, T. and Chiba, K. (2019) SGK regulates pH increase and cyclin B-Cdk1 activation to resume meiosis in starfish ovarian oocytes. J Cell Biol. 218. 3612-3629 (千葉研)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6829648/
ヒトデ卵母細胞のろ胞細胞から分泌されるホルモンは、卵内のSerum- and glucocorticoid-regulated kinase(SGK)の活性化にはたらき、SGKがさらに細胞周期の駆動と細胞内pHを上昇させることで、卵の減数分裂を再開させ、紡錘体を形成させることを明らかにした。

Yokoyama, M., Senoo, M.,  Kage, A. and Mogami, Y. (2019) Responses of Bioconvection of Tetrahymena thermophila to Partial Gravity Created by Aircraft Flight. Zool. Sci., 36, 159-166. (最上研)
https://bioone.org/journals/zoological-science/volume-36/issue-2/zs180146/Responses-of-Bioconvection-of-Tetrahymena-thermophila-to-Partial-Gravity-Created/10.2108/zs180146.short
生物対流に潜む,自己組織化現象とそれを介した地球重力の機能発現を探る目的で,地上実験では困難な1G以下の低重力下速度環境を航空機のフライト・マヌーバーを調整することで発生させた。低重力環境がテトラヒメナの生物対流挙動に及ぼす作用を,マクロパターン形成と個々の微小生物の重力走性遊行動を同時記録することで解析した。ふたつのレベルにおける閾値等の明確な違いは,確認できなかったが,細胞間の相互作用に重力が作用している可能性が示唆された。

Momoka HAYASHIDA, Kei HASHIMOTO, Tomoko ISHIKAWA, Yasunori MIYAMOTO. (2019) Vitronectin deficiency attenuates hepatic fibrosis in a non-alcoholic steatohepatitis- induced mouse model. Int. J. Exp. Pathol. 100: 72-82. (宮本研)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/iep.12306
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の進行と、肝臓で高い発現が見られる細胞接着タンパク質ビトロネクチンの関係を解析した。ビトロネクチン欠損によりコラーゲンの蓄積、炎症性サイトカインの産生、肝星細胞の活性化の抑制が観察され、ビトロネクチンがNASHの重篤化に寄与していることが示された。

Miyaka SUGAHARA, Yuri NAKAOKI, Ayano YAMAGUCHI, Kei HASHIMOTO, Yasunori MIYAMOTO. (2019) Vitronectin is involved in the morphological transition of neurites in retinoic acid-induced neurogenesis in the neuroblastoma cell line Neuro2a. Neurochem. Res. 44: 1621–1635. (宮本研)
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs11064-019-02787-4
細胞接着分子ビトロネクチンは、神経発生時において発現が見らているがその機能が未解明である。神経芽腫細胞株Neuro2a細胞のレチノイン酸による神経分化誘導モデルにおいてビトロネクチンをノックダウンをすることにより多極性―双極性遷移が抑制されることが観察された。またこの遷移に極性化因子Par複合体が関与することを明らかにした。

2018

Tamura, R., Takada, M., Sakaue, M., Yoshida, A., Ohi, S., Hirano, K., Hayakawa, T., Hirohashi, N., Yura, K., and Chiba, K. (2018) Starfish Apaf-1 activates effector caspase-3/9 upon apoptosis of aged eggs. Sci Rep. 8:1611, 1-14.(千葉研)
https://www.nature.com/articles/s41598-018-19845-6
ヒトデ卵を受精させないと、数時間後にアポトーシスする。今回、そのアポトーシスにヒトデApaf-1とcaspase-3/9が関与することを明らかにした。受精は、発生を開始させる働きがあるだけでなく、卵をアポトーシスから救う役割を持つ意義があるとも考えられる。

Honoka Kobayashi, Yuka Haino, Takaya Iwasaki, Ayumi Tezuka, Atsushi J. Nagano, Satoshi Shimada. (2018) ddRAD-seq based phylogeographic study of Sargassum thunbergii (Phaeophyceae, Heterokonta) around Japanese coast. Marine Environmental Research doi.org/10.1016/j.marenvres.2018.05.021. (嶌田研)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0141113618300850
一次生産者として海域生態系を支えている重要な生物群の海藻類は、地球温暖化の影響などで減少が続いていて今後も減少が続くことが予想されています。次世代シーケンサーでのRAD-seqで取得したゲノムワイドなSNPsデータを用いて遺伝的多様性や分布変遷史を解析し、将来の分布シミュレーションをおこないました。

Kei HASHIMOTO, Mari NAKASHIMA, Ayana HAMANO, Mari GOTOH, Hiroko IKESHIMA-KATAOKA, Kimiko MURAKAMI-MUROFUSHI, Yasunori MIYAMOTO. (2018) 2-carba cyclic phosphatidic acid suppresses inflammation via regulation of microglial polarization in the stab-wounded mouse cerebral cortex. Sci. Rep. 8: 9715.(宮本研)
https://www.nature.com/articles/s41598-018-27990-1
マウス脳損傷の修復過程において、環状リゾホスファチジン酸である2立方センチメートルPAをマウスに投与して効果を解析した。その結果、2立方センチメートルPAは血液漏出を抑制し、損傷後に生じる炎症を抑制し、ミクログリア細胞の特性を神経保護性に変化させていることを見出した。

Ayaka ABE, Kei HASHIMOTO, Ayumi AKIYAMA, Momoe IIDA, Natsumi IKEDA, Ayana HAMANO, Riho WATANABE, Yokichi HAYASHI, Yasunori MIYAMOTO. (2018) Alpha v beta5 integrin mediates the effect of vitronectin on the initial stage of differentiation in mouse cerebellar granule cell precursors. Brain Res. 1691: 94-104. (宮本研)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006899318302191?via%3Dihub
小脳形成時において、小脳神経細胞の大半を占める顆粒細胞の増殖や分化制御機構を探ることは、小脳形成機構において重要な観点である。小脳顆粒神経細胞の初期分化進行を細胞外マトリックスタンパク質ビトロネクチンからの情報をαvβ5インテグリンが受容体として制御していることを明らかにした。
 
Makiko ONISHI, Ko YAMANAKA, Yasunori MIYAMOTO, Hidefumi WAKI, Sabine GOURAUD. (2018) Trpv4 involvement in the gender differences in blood pressure regulation inspontaneously hypertensive rats. Physiological Genomics 50: 272-286.(宮本研)
https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/physiolgenomics.00096.2017
女性の動脈圧は、同年齢の男性に比べて低いことが知られているが、この動脈圧の恒常性に脳の循環器系中枢が関与している。その作用機構が不明であった。そこで、この作用機構を調べる手がかりとして、循環器中枢における各遺伝子の性差による発現変化を調べた。その結果から血圧の降圧効果が知られているTrpv4遺伝子の発現が性差により大きく異なることを見出した。

Kei HASHIMOTO, Naoyo KAJITANI, Yasunori MIYAMOTO, Ken-ichi MATSUMOTO. (2018)  Wound healing-related properties detected in an experimental model with a collagen gel contraction assay are affected in the absence of tenascin-X. Exp. Cell Res. 363: 102-113 . (宮本研)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0014482717306791?via%3Dihub
皮膚の過伸展や関節の可動性亢進の症状が知られているエーラスダンロス症候群の原因遺伝子の一つとして知られるテネイシンX遺伝子について、テネイシンX欠損の線維芽細胞が損傷修復モデルのコラーゲンゲル収縮系で収縮の促進効果が見られた。この過程にTGFβやMMPなどの損傷修復時に関わる因子のテネイシンX欠損による影響が関わっていることを明らかにした。

Kasumi HIGASHINE*, Kei HASHIMOTO*, Emi TSUJIMOTO, Yuko OISHI, Yokichi HAYASHI, Yasunori MIYAMOTO. (*第一著者として寄与は同等) (2018) Promotion of differentiation in developing mouse cerebellar granule cells by a cell adhesion molecule BT-IgSF, Neurosci. Let. 686 : 87-93.  (宮本研)
小脳顆粒前駆細胞は、小脳形成時の主要な神経前駆細胞である。この小脳形成時の分子層において細胞接着分子BT-IgSFの発現が顕著に見られ、分化への影響が示唆された。小脳顆粒前駆細胞の増殖分化への寄与を調べたところ、増殖抑制、分化促進の効果がBT-IgSFにおいて発揮されることが明らかにさえた。

2017

堀内はるな,小林穂ノ佳,岩崎貴也,嶌田智.(2017)  日本沿岸における褐藻ヒジキの系統地理学的解析. 藻類 65: 139-148.(嶌田研)
http://sourui.org/publications/sorui/list/65_03.html
食卓でもお馴染みのヒジキは、日本近海に広く分布する海藻です。ただし、沖縄では絶滅危惧種に指定され、今後の地球温暖化で個体群の消滅が危惧されています。そこで本研究では、日本全国での採集、マイクロサテライトマーカーでの各種系統地理学的解析によって、遺伝的多様性に関する健全性診断、分布変遷史の推定、今後の分布シミュレーションをおこないました。

Kei HASHIMOTO, Natsumi IKEDA, Mari NAKASHIMA, Hiroko IKESHIMA-KATAOKA, and Yasunori MIYAMOTO. (2017)  Vitronectin regulates the fibrinolytic system during the repair of cerebral cortex in stab-wounded mice. J. Neurotrauma 34: 3183-3191.(宮本研)
https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/neu.2017.5008?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed
マウス脳損傷の修復過程における血漿タンパク質であるビトロネクチンの役割を解析した。ビトロネクチン欠損マウスを用いて脳損傷を引き起こした際、血液漏出が長引くことを見出した。この作用機構として、ビトロネクチン欠損が血液凝固の抑制、血栓の溶解に関わる線溶系の促進を引き起こすことを見出した。

2016

Masakiyo, Y., Ogura, A., Ichihara, K., Yura, K., Shimada, S. (2016) Candidate key genes for low-salinity adaptation identified by RNA-seq comparison between closely related Ulvarian species in marine and brackish waters. Algal Resources, 9(2), 61-76. (嶌田研)
種分化の引き金となった海水から汽水への適応を可能にした遺伝子を突き止めました。緑藻の近縁な海産種と汽水産種を用いた次世代シーケンサーRNAseqにより、低塩環境で発現が上昇している遺伝子群を網羅的に解析したところ、硫黄などを取り込むトランスポーターや細胞壁を柔らかくするハイドロラーゼなどが低塩適応に重要な役割をしていることがわかりました。

Suzuki, Y., Yura, K. (2016) Conformational shift in the closed state of GroEL induced by ATP-binding triggers a transition to the open state. Biophysics and Physicobiology, 13, 127-134. (由良研)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophysico/13/0/13_127/_article
シャペロンタンパク質GroELはATPのエネルギーを使って、タンパク質のリフォールディングをやっているわけではありません。それではATPは何をしているのでしょうか?コンピュータシミュレーションによって、ATPはGroELをある特定の形に変化するように調整している役割を果たしていることがわかりました。

Aoto, S., Yura, K. (2016) Case study on the evolution of hetero-oligomer interfaces based on the differences in paralogous proteins. Biophysics and Physicobiology, 12, 103-116. (由良研)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophysico/12/0/12_103/_article
さまざまなタンパク質が相互作用することで、細胞は機能します。タンパク質の相互作用面にはどのような特徴があるのでしょうか?タンパク質相互作用のビッグデータ解析を行うことで、その界面には様々な特徴があることがわかりました。

Kei HASHIMOTO, Fumi SAKANE, Natsumi IKEDA, Ayumi AKIYAMA, Miyaka SUGAHARA, and Yasunori MIYAMOTO “Vitronectin promotes the progress of the initial differentiation stage in cerebellar granule cells” Molecular and Cellular Neuroscience (2016) 70: 76-85 (宮本研)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1044743115300403?via%3Dihub
細胞接着タンパク質ビトロネクチンが、マウスの小脳形成においてどのような役割を持つのかを明らかにした。ビトロネクチンノックアウトマウスを用いた解析により、小脳の主要な神経細胞である小脳顆粒細胞の初期分化段階を促進する機能を持つことを明らかにした。

Ochi, H., and Chiba, K. (2016) Hormonal stimulation of starfish oocytes induces partial degradation of the 3’ termini of cyclin B mRNAs with oligo(U) tails, followed by poly(A) elongation. RNA. 22, 822–829.(千葉研)
https://rnajournal.cshlp.org/content/22/6/822.full
mRNAの5’末端のウリジル化はRNAの分解シグナルであると考えられていたが、ヒトデの発生過程においては、分解よりも転写制御に関わることを明らかにした。

Ochi, H., Aoto, S., Tachibana, K., Hara, M., and Chiba, K. (2016) Block of CDK1-dependent polyadenosine elongation of Cyclin B mRNA in metaphase-I-arrested starfish oocytes is released by intracellular pH elevation upon spawning. Mol. Reprod. Dev. 83, 79–87.(千葉研)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/mrd.22599
母性サイクリンmRNAがポリA伸長によって翻訳活性化されるためには、卵減数分裂過程で活性化される細胞周期エンジンのcdk1だけでなく、放卵後の細胞内pH上昇が必須であることを明らかにした。

2015

Kamijyo, A., Yura, K., Ogura, A. (2015) Distinct evolutionary rate in the eye field transcription factors found by estimation of ancestral protein structure. Gene, 555 (2), 73-79. (由良研)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0378111914011378?via%3Dihub
地球上に最初にあらわれた脊椎動物の目の発生は、現在の我々の目の発生とどの程度違っていたのでしょうか?最初の脊椎動物がもっていた、目の発生を制御する転写因子をコンピュータで復元し、その形を我々がもつ転写因子と比較しました。

Matsumoto, K. and Satoshi Shimada. (2015) Systematics of green algae resembling Ulva conglobata, with a description of Ulva adhaere sp. nov. (Ulvales, Ulvophyceae). European Journal of Phycology 50: 100-11. (嶌田研)
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/09670262.2014.994189
緑藻アオサ・アオノリ類は,まだ半数が生物学的な名前がついていない“新種”と考えられています。外部形態的に緑藻ボタンアオサと思われるサンプルを網羅的に分子系統解析にかけたところ,5種もの存在が示唆され,そのうちの1種を新種カサネアオサ(Ulva adhaere Matsumoto et Shimada sp. nov)として発表しました。

Matsuwaki, I., Harayama, S. and Kato M. (2015) Assessment of the biological invasion risks associated with a massive outdoor cultivation of the green alga, Pseudochoricystis ellipsoidea. Algal Research 9: 1-7. (加藤研)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2211926415000478
石油代替エネルギーとなる油脂を多量に合成し企業による実用化が進められている単細胞の微細藻類シュードコリシスティスを屋外開放系で培養した場合に、どの程度の距離を飛散するかを実際に屋外培養施設で調査した。また、培養施設から流出した場合の生残性を調べ、環境中の水に含まれる硝酸性窒素濃度が鍵となることを示した。

Nakayama, F., Mizuno K. and Kato M. (2015) Biosynthesis of caffeine underlying the diversity of motif B’ methyltransferase. Nat. Pro. Commun. 10: 799-801.
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1934578X1501000524
お茶やコーヒーにような特殊な植物に含まれるカフェインを合成する酵素が植物界の中でどのように進化したかを考え、お茶やコーヒーがカフェイン合成能力を獲得した理由を考察した。(加藤研)

Kariyazono TS, Hatta M (2015) Bail-out of the polyp from the skeleton of spats in the scleractinian coral Acropora tenuis Galaxea, JCRS 17: 18-19. (服田研)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/galaxea/17/1/17_19/_article
ミドリイシサンゴの初期ポリプは出芽していても骨格から抜け出ることができることを発見。しかも体の基本形はヒドラと同じであることを直接示した。卒業研究の傍らでの成果。

Takahashi, K., Yoshida, K., Yura, K., Ashihara, H. and Sakuta, M. (2015) Biochemical analysis of Phytolacca DOPA dioxygenase. Nat. Prod. Com. 10:717-719. (作田研)
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1934578X1501000505
ナデシコ目植物に特異的な赤色色素ベタシアニン合成の鍵酵素であるドーパジオキシゲナーゼの生化学的解析を行い、活性中心の構造について進化的考察を行った。

Takahashi, K., Yoshida, K. and Sakuta, M. (2015) Comparative analysis of two DOPA dioxygenases from Phytolacca americanaNat. Prod. Com. 10:713-716. (作田研)
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1934578X1501000504
ナデシコ目植物のヨウシュヤマゴボウに存在する2つのドーパジオキシゲナーゼホモログの構造と機能について解析を行い、分子進化学的考察を行った。

2014

Chie Shimamoto, Tetsuo Ohnishi, Motoko Maekawa, Akiko Watanabe, Hisako Ohba, Ryoichi Arai, Yoshimi Iwayama, Yasuko Hisano, Tomoko Toyota, Manabu Toyoshima, Katsuaki Suzuki, Yukihiko Shirayama, Kazuhiko Nakamura, Norio Mori, Yuji Owada, Tetsuyuki Kobayashi and Takeo Yoshikawa. (2014) Functional characterization of FABP3, 5 and 7 gene variants identified in schizophrenia and autism spectrum disorder and mouse behavioral studies. Human Molecular Genetics, HMG Advance Access published July 30, 1–17. doi:10.1093/hmg/ddu369 (小林研)
https://academic.oup.com/hmg/article/23/24/6495/608031
水が基本になって作られている生体内では、水分子に馴染まない脂質分子は特定のタンパク質(脂肪酸結合タンパク質)と結合して運ばれ、さまざまな機能を果たす。統合失調症や自閉症などの精神疾患の発症や病状に、ある種の脂質結合タンパク質が深く関わっていることをこの研究で明らかにした。

Kawai, Y.L., Yura, K., Shindo, M., Kusakabe, R., Hayashi, K., Hata, K., Nakabayashi, K., Okamura, K. (2014) Complete genome sequence of the mitochondrial DNA of the river lamprey, Lethenteron japonicum. Mitochondrial DNA, doi:10.3109/19401736.2013.861432. (由良研)
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.3109/19401736.2013.861432?journalCode=imdn20
カワヤツメのミトコンドリアゲノムは、スナヤツメなどの他のヤツメウナギとどのように違っているのでしょうか?あまり違いがないのでしょうか?配列を決定して調べました。

Matsumoto, K., Kensuke Ichihara & Satoshi Shimada. (2014) Taxonomic reinvestigation of Petalonia (Phaeophyceae, Ectocarpales) in southeast of Honshu, Japan, with a description of Petalonia tenuissp. nov. Phycologia 53: 127-136. (嶌田研)
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.2216/13-200.1
千葉県ではお正月のお雑煮に入れる褐藻ハバノリ類。逗子地方のみの予備的調査において,既報2種に加えて第3の種の存在が示唆されました。調査域を拡大し,網羅的分子系統,培養実験等により第3の種の独立性や生態的地位の違いが明らかになり,新種キヌハバノリ(Petalonia tenui Matsumoto et Shimada sp. nov.)として発表しました。

Masakiyo, Y. & Satoshi Shimada. (2014) Species diversity of the genu Ulva(Ulvophyceae, Chlorophyta) in Japanese waters, with special reference toUlva tepida Masakiyo et S.Shimada sp. nov. Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Series B 40: 1-13. (嶌田研)
(PDF注意) https://www.kahaku.go.jp/research/publication/botany/download/40_1/BNMNS_B40-1_1-13.pdf
海岸にいけば,いつでもどこでも生育している緑藻アオサ・アオノリ類。日本中からサンプルを採集して,分子同定をおこないました。その結果,なんと半数は名前がまだ付いていない新種であることが判明しました。そのうちの1つ関東の夏場の海岸で繁茂するアオノリ類を新種ナツアオノリ(Ulva tepida Masakiyo et S.Shimada sp. nov.)として発表しました。

Yoshizawa, E., Kaizuka, M., Yamagami, A., Higuchi-Takeuchi, M., Matsui, M., Kakei, Y., Shimada, Y., Sakuta, M., Osada, H., Asami, T. and Nakano, T. (2014) BPG3 is a novel chloroplast protein that involves the greening of leaves and related to brassinosteroid signaling. Biosci. Biotechnol. Biochem. 78:420-429. (作田研)
https://academic.oup.com/bbb/article/78/3/420/5938298
新たなブラシノステロイド情報伝達因子BPG3を同定し、これが緑化制御に関わることを明らかにした。
日本農芸化学会2014年度論文賞受賞。

2013

Sakane, F. and Yasunori MIYAMOTO. (2013) N-cadherin regulates the proliferation and differentiation of ventral midbrain dopaminergic progenitors. Developmental Neurobiology73, 518-529. (宮本研)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/dneu.22077
中脳ドーパミン神経は、パーキンソン病や統合失調症などの疾患に関わる神経として注目されている。この中脳ドーパミン神経の形成に、細胞接着を担うN-カドヘリンが関与していることを、マウスを用いた解析により明らかにした。

Terui, H., Akagi, K., Kawame, H., Yura, K. (2013) CoDP: predicting the impact of unclassified genetic variants in MSH6 by the combination of different properties of the protein.  Journal of Biomedical Science, 20, 25. (由良研)
https://jbiomedsci.biomedcentral.com/articles/10.1186/1423-0127-20-25
遺伝子にみつかる変異がさまざまな疾患の原因であることはわかってきていますが、具体的に変異が疾患につながるのでしょうか?変異位置と発病に対応関係があるのでしょうか?DNA修復タンパク質MSH6をコードする遺伝子にみつかる変異と大腸ガンとの関係を調べました。

Kobayashi, E., Yura, K., Nagai, Y. (2013) Distinct Conformation of ATP Molecule in Solution and on Protein. BIOPHYSICS, 9, 1-12.(由良研)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophysics/9/0/9_1/_article
生体のエネルギー通貨として知られるATPは、教科書では2次元で描かれています。しかし細胞の中ではどのようなかたちをしているのでしょうか?タンパク質と結合している時は、そうではないときと形が違うのでしょうか?コンピュータシミュレーションによって、ATPの形状の多様性を明らかにしました。

Matsumoto, K & Satoshi Shimada. (2013) Taxonomic reassessment of Chondrus verrucosus(Rhodophyta, Gigartinales), with a description of Chondrus retortussp. nov. Phycological Research 61: 299-309.(嶌田研)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/pre.12028
小型なのに生殖器官を付けた紅藻“イボツノマタ”を発見しました。分子同定をおこなうと大型のものと別種であることが判明し,新種コマタ(Chondrus retortusMatsumoto et Shimada sp. nov.)として発表しました。

大西舞、菊地則雄、岩崎貴也、河口莉子、嶌田智.(2013) 絶滅危惧I類に指定されている紅藻アサクサノリの集団遺伝構造. 藻類 61: 84-97.(嶌田研)
http://sourui.org/publications/sorui/list/61_02.html
名前は有名な紅藻アサクサノリですが,2008年には生育地が8カ所しか確認できず絶滅危惧I類に指定されています。日本各地からのサンプルの分子同定により,汽水域のみから38カ所の分布地を確定することができました。系統地理学的・集団遺伝学的解析の結果,九州での多様性の高さや九州→関東→東北へと分布域が拡大したことが示唆されました。

Kage, A., Hosoya, C., Baba, S.A. and Mogami, Y. (2013) Drastic reorganization of the bioconvection pattern of Chlamydomonas: quantitative analysis of the pattern transition response. J. Exp. Biol., 216, 4557-4566.(最上研)
https://journals.biologists.com/jeb/article/216/24/4557/11830/Drastic-reorganization-of-the-bioconvection
クラミドモナスの生物対流現象におけるダイナミックな挙動(パターン遷移現象)をはじめて報告した。クラミドモナスの生物対流パターンは相転移のように,突然サイズを変化させる。クラミドモナスの鞭毛運動の変化が,この現象のメカニズムを引き起こす可能性を示した。

Matsuda, T, Kanki, T., Tanimura, T., Kang, D. and Matsuura, E. T. (2013) Effects of overexpression of mitochondrial transcription factor A on lifespan and oxidative stress response in Drosophila melanogaster. Biochem. Biophys. Res. Commun. 430:717-721.(松浦研)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006291X12022590
ミトコンドリア内ではたらく転写因子(TFAM)には,ミトコンドリアDNA(mtDNA)に結合してmtDNAを酸化傷害から保護する役割があると考えられている。この論文では,TFAMを過剰に発現させたキイロショウジョウバエの寿命が,酸化ストレスのある条件下では長くなることを示した。

Moriwaki, K., Nakagawa, T., Nakaya, F., Hirohashi, N., and Chiba, K. (2013) Arrest at metaphase of meiosis I in starfish oocytes in the ovary is maintained by high CO2 and low O2 concentrations in extracellular fluid. Zoolog. Sci. 30, 975–984.(千葉研)
https://bioone.org/journals/zoological-science/volume-30/issue-11/zsj.30.975/Arrest-at-Metaphase-of-Meiosis-I-in-Starfish-Oocytes-in/10.2108/zsj.30.975.short
ヒトデ卵の減数分裂は、卵巣内において第一分裂の中期でいったん休止する。本研究では、体腔内の高いCO2 と低い O2濃度で休止しており、高いCO2濃度で細胞内pHが下がることが休止に必要であることを明らかにした。

2012

Niitsu, R., Kanazashi, M., Matsuwaki, I., Ikegami, Y., Tanoi, T., Kawachi, M., Watanabe, M.M. and Kato, M. (2012) Changes in the hydrocarbon-synthesizing activity during growth of Botryococcus braunii B70. Bioresource Technol.109:297-299.(加藤研)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960852411011801?via%3Dihub
石油代替エネルギーとなる油脂を合成する単細胞の微細藻類ボトリオコッカスが、光合成によって細胞内で固定された二酸化炭素からどのようにして油脂に変換されるかを解析した。

Oda, Y., Yui, R., Sakamoto, K., Kita, K. and Matsuura, E. T. (2012) Age-related changes in the activities of respiratory chain complexes and mitochondrial morphology in Drosophila. Mitochondrion12:345-351.(松浦研)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1567724912000268
ミトコンドリアの構造や呼吸鎖複合体の活性が加齢にともなってどのように変化するかを,キイロショウジョウバエを用いて調べた。複合体Iの活性の減少やミトコンドリアの増大,クリステの断片化などの変化は,加齢が進んで死亡率が上昇する以前から認められ,このような変化の蓄積が老化につながることが考えられた。

Otsuki, J., Nagai, Y., Lopata, A., Chiba, K., Yasmin, L., and Sankai, T. (2012) Symmetrical division of mouse oocytes during meiotic maturation can lead to the development of twin embryos that amalgamate to form a chimeric hermaphrodite. Hum. Reprod. 27, 380–387.(千葉研)
https://academic.oup.com/humrep/article/27/2/380/2919322
マウスの減数分裂において、卵を押し付けると等割する。等割したそれぞれの卵母細胞が受精すると、それぞれの細胞は正常に発生するだけでなく、同じ透明帯内でそのまま発生させると、キメラとなることを明らかにした。

2011

Kihara R.,Yoshinori KASASHIMA, Katsuhiko ARAI, and Yasunori MIYAMOTO (2011) Injury induces a change in the functional characteristics of cells recovered from equine tendon. Journal of Equine Science22, 57-60(宮本研)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4013992/
競走馬の前足の屈腱の炎症である屈腱炎は、完治が難しく、競走馬の引退につながる疾患である。その屈腱炎により腱の性質が変わっているのではないかと考え、屈腱炎由来の腱細胞の細胞特性を調べたところ、コラーゲンの収縮特性や細胞移動能の低下を観察した。

Horimoto, R., Yuka Masakiyo, Kensuke Ichihara & Satoshi Shimada. (2011) Enteromorpha-like Ulva(Ulvophyceae, Chlorophyta) growing in the Todoroki River, Ishigaki island, Japan, with special reference toUlva meridionali Horimoto et Shimada sp. nov. Bulletion of the National Science Museum37: 155-167.(嶌田研)
(PDF注意) https://www.kahaku.go.jp/research/publication/botany/download/37_4/BNMNS_B370402.pdf
沖縄県石垣島の河口域に大量に生育するアオノリ類を発見しました。分子データ・形態データともに既報種とは異なっていることが判明し,新種ミナミアオノリ(Ulva meridionali Horimoto et Shimada sp. nov.)として発表しました。

Kage A., Asato E., Chiba Y., Wada Y., Katsu-Kimura Y., Kubota A., Sawai S., Niihori M., Baba S.A. and Mogami Y. (2011) Gravity-Dependent Changes in Bioconvection of Tetrahymena and Chlamydomonas during Parabolic Flight: Increases in Wave Number Induced by Pre- and Post-Parabola Hypergravity. Zool. Sci., 28, 206-214.(最上研)
https://bioone.org/journals/zoological-science/volume-28/issue-3/zsj.28.206/Gravity-Dependent-Changes-in-Bioconvection-of-Tetrahymena-and-Chlamydomonas-During/10.2108/zsj.28.206.short
生物対流現象に関わる重力の作用を,航空機を用いた変動重力実験(無重力を含む)を行うことで解析した。対流を作る生物によって重力効果が異なることを明らかにした。
2012年日本動物学会論文賞(Zoological Science Award)受賞

Yui, R. and Matsuura, E. T. (2011) Selective transmission of mitochondrial DNA occurs in individual flies. Cytologia76:367-372.(松浦研)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cytologia/76/3/76_3_367/_article
キイロショウジョウバエに異種のミトコンドリアを導入すると,温度に依存してミトコンドリアの置換が起こることを以前に見出している。この論文では,このような置換がそれぞれの個体内で生じていることを,PCRを用いた微量のミトコンドリアDNAの定量によって確認した。

Hideko Tanaka and Tetsuyuki Kobayashi (2011) Characterization of a 62-Kilodalton Acidic Phospholipid-Binding Protein Isolated from the Edible Mushroom Pleurotus ostreatus. J. Health Sci. 57 (1), 99-106. doi:10.1248/jhs.57.99. (小林研)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhs/57/1/57_1_99/_article
細胞膜は、いろいろな構造をした脂質分子が多数集まってできている。食用キノコの一種であるヒラタケに、細胞膜を作っている脂質分子の一つホスファチジルグリセロール(PG)と特異的に結合するタンパク質を見出し、その結合の性質を明らかにした。PGは広く生物界に存在し、動物では組織・臓器・細胞小器官の分布に特徴があるが、その生物学的役割は良く分かっていない。このタンパク質を使って、今後PGの機能を探る道が拓かれた。

Jin, M., Fujiwara, E., Kakiuchi, Y., Okabe, M., Satouh, Y., Baba, S. A., Chiba, K., and Hirohashi, N. (2011) Most fertilizing mouse spermatozoa begin their acrosome reaction before contact with the zona pellucida during in vitro fertilization. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 108, 4892–4896.(千葉研)
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.1018202108
マウスの受精において、マウス卵透明帯が精子先体反応を引き起こすとこれまで考えられていた。しかし本研究によって、精子先体反応は精子が透明帯に到着する以前に引き起こされていることが明らかになった。

2010

Matsushima K., Fujiwara E, Hatta M (2010 An unidentified species of acoel flatworm associated with the coral genus Acropora from the field of Japan. Galaxea, JCRS12: 51. (服田研)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/galaxea/12/1/12_1_51/_article
サンゴの観察中に、サンゴの表面に擬態して潜んでいる小さなヒラムシを発見。DNA鑑定から未記載種と判明。新種発見の可能性はまだまだあります。

Matsushima K., Kiyomoto M, Hatta M (2010) Aboral localization of responsiveness to a metamorphic neuropeptide in the planula larva of Acropora tenuis. Galaxea, JCRS 12: 77-81 (2010). (服田研)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/galaxea/12/2/12_2_77/_article
ミドリイシサンゴの幼生に変態を誘導する神経ペプチドホルモンは、体の反口端に受容能力が局在していることを明らかにした。

Hosoya, C., Akiyama, A., Kage A., Baba S.A. and Mogami Y. (2010) Reverse bioconvection of Chlamydomonas in the hyper-density medium. Biol. Sci. Space, 24, 145-152. (最上研)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bss/24/3_4/24_145/_article
クラミドモナスでの生物対流発現の基礎となる負の重力走性行動のメカニズムを解明した。クラミドモナスは周りの液体の密度を大きくする(何もしなければ浮き上がってしまう状況にする)と,下向きに泳ぎ,通常とは逆向きの対流を形成した。これはクラミドモナスの重力走性が細胞体の前後の非対称性に基づくことを示している。

Ayako Uchiyama, Yukari Arai, Tetsuyuki Kobayashi, Gabor Tigyi and Kimiko Murakami-Murofushi (2010) Transcellular invasion of MM1 rat ascites hepatoma cells requires matrix metalloproteinases derived from host mesothelium. Cytologia,75, 269-272. doi:10.1508/cytologia.75.267 (小林研)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cytologia/75/3/75_3_267/_article/-char/en
がん細胞が組織に浸潤して転移するしくみについて、培養細胞技術を駆使して研究した。その結果、がん細胞の浸潤には特定の脂質分子が深く関わっており、宿主正常細胞とがん細胞の相互作用が重要であることを明らかにした。

Harada, K., Fukuda, E., Hirohashi, N., and Chiba, K. (2010) Regulation of Intracellular pH by p90Rsk-dependent Activation of an Na+/H+ Exchanger in Starfish Oocytes. J. Biol. Chem. 285, 24044–24054.(千葉研)
https://www.jbc.org/article/S0021-9258(20)61871-3/fulltext
ヒトデ卵減数分裂過程で、細胞内pHは、p90Rsk 依存的なNa+/H+エクスチェンジャーの活性化によって制御されていることを明らかにした。

  •  
  • このエントリーをはてなブックマークに追加