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宮本 泰則(みやもとやすのり)

2017年7月10日更新

宮本 泰則(みやもとやすのり)

分子細胞生物学

小学生の頃から、機械いじりよりも植物を見たり育てたりが好きな変な少年でした。そんな私でしたが、大学の2年の時に、生物物理の講義を聞いて方向が変わりました。それは「生きているとは何か」を物理的にとらえる話でした。話としては、わかったようなわからないようなものでした。その後、生物物理学の研究室から出発し、細胞生物学、分子生物学と分野を変えていきました。その中でも初めて生きている動物細胞を顕微鏡で見た感動が忘れられずに、細胞を研究対象にしようと考えました。具体的には、細胞接着分子の発現制御機構の解明というものをやっています。少しでも生きていることが理解できればと願っています。現在の生物学は、生体高分子を軸にした理解が多いですが、若い皆さんには、これまでの発想に捕らわれずに、新しいアプローチを考えて欲しいと願っています。

研究紹介

宮本 泰則(MIYAMOTO Yasunori)

宮本 泰則(MIYAMOTO Yasunori)
所属
ヒューマンライフイノベーション研究所 准教授
担当大学院(教育院),学部
博士後期(博士)課程
 ライフサイエンス専攻 生命科学領域
博士前期(修士)課程
 ライフサイエンス専攻 生命科学コース
理学部生物学科
主な担当授業科目 (学部)

細胞生物学、分子細胞情報学、遺伝子工学、基礎生物学A、
細胞生物学実習、分析・光学機器実習、生物学実習II

主な担当授業科目 (大学院)

分子細胞生物学(動物)、分子細胞生物学(動物)演習、
生命科学特論(分子細胞生理学)

専門分野

分子細胞生物学、神経生物学

所属学会等

日本結合組織学会、日本神経科学学会、日本神経化学学会、
北米神経科学学会、アメリカ細胞生物学会

研究室

理学部2号館201号室    宮本研究室HP

E-mail(@ocha.ac.jp)

miyamoto.yasunori

主な研究課題とその紹介 

 細胞外マトリックスは、細胞外に存在し細胞と細胞の間に詰まっている不溶性成分の総称であります。主なものとしては、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチンなどが知られています。近年、この細胞外マトリックスが単に、組織に物理的な強度を与えているだけでなく、その3次元構造そのものがいわゆる”空間情報”をもち、細胞の増殖、分化、運動に影響を与えることが明らかになってきています。しかしその分子機構はいまだに明らかになっていない部分が多く残されています。また細胞外マトリックスの”空間情報”は、細胞の細胞外マトリックス成分の発現制御により構築されており、その巧妙な発現制御が、形態形成に必須であると考えられています。我々の研究室においては、細胞外マトリックスの細胞への作用機構及び”空間情報”に関わる発現制御機構について分子レベルでの解明を目指しています。下記に現在取り組んでいるテーマを示しています。

1.神経前駆細胞の増殖・分化における細胞外マトリックス分子ビトロネクチンとそのレセプターであるインテグリンの役割

 1990年代後半より、神経系の発生過程の網膜の視神経、神経管底板、小脳顆粒前駆細胞においてビトロネクチン及びインテグリンαvの発現が一過性に見られることが観察されており、加えて細胞の増殖・分化・突起伸長に関与することが報告されている。我々の研究室では、神経芽腫細胞株Neuro2a、胚性腫瘍細胞株P19の神経分化のモデル細胞及び小脳顆粒前駆細胞の初代培養の系を用い、ビトロネクチンやインテグリンαv の発現制御及び機能解析を目指しています。

1)神経前駆細胞の増殖・分化・突起伸長に対するビトロネクチン及びインテグリンαvの制御機構の解析                           

神経前駆細胞の増殖・分化・突起伸長は、空間的・時間的に精緻に制御されている。この制御に細胞外マトリックスの一つビトロネクチンが関わっていることがこれまでの報告により明らかにされてきつつある。我々の研究室では、現在、培養細胞の神経培養分化のモデル系である胚性腫瘍細胞株P19や神経芽腫細胞株 Neuro2aを用い、ビトロネクチン及びそのレセプターであるインテグリンの機能を解析している。最近、マウス小脳顆粒前駆細胞の初代培養を用いた系を構築し、更なる解析を進めています。このように生体における神経分化に対するビトロネクチンの意義を明らかにしたいと考えている。

 

2.大脳損傷修復における細胞外マトリックス分子の役割 

交通事故やスポーツ事故などで脳に生じる外傷性脳損傷は、直接的には物理的な損傷であり、その治療としては、まず頭がい骨骨折や出血に対する外科的な治療が主要な処置である。しかし、外傷性脳損傷患者にとって大きな問題は、その後に 生じる後遺症である。後遺症として、注意力低下、遂行機能障害、脱抑制症状など高次機能の傷害が見られ、生活の質(Quality of Life, QOL)の低下がおこる。この後遺症には、外傷性脳損傷の一次的な損傷(物理的な損傷)より、二次的な損傷が強く影響しており、その影響とは、損傷部位で起こる炎症に由来する。 炎症が周囲の神経細胞の変性による神経細胞死を引き起こす。この二次的な損傷をいかに抑えるかが、後遺症の改善に大きく関わってくる。しかし、この二次的な損傷を抑える有効な治療薬はいまだ開発されていない。

宮本研究室では、マウスの大脳皮質に対して、注射針を用いた穿刺傷害を与え、その脳損傷修復に対するビトロネクチンを始めとした細胞外マトリックス分子の役割を解析している。ビトロネクチン欠損マウスにおいて、線溶系促進による出血の促進が観察されており、ビトロネクチンの出血抑制効果が示唆されている。また、ビトロネクチンの血液脳関門の修復への寄与が示唆されている。

 

3.環状ホスファチジン酸の大脳損傷修復における役割 

外傷性脳損傷の二次的な損傷を抑える物質として、リゾリン脂質の一つである環状ホスファチジン酸(cyclic phosphatidic acid; cPA)に宮本研究室では、期待している。cPA は室伏きみ子先生が発見された生体内に存在する生理活性脂質であり、哺乳類では血清、 脳組織に豊富に存在し、sn -2と sn -3に環状構造を持つ。共同研究者の室伏先生、後藤先生らのグループは、cPA はマウスの多発性 硬化症モデルにおいて脱髄、アストログリア増殖症、ミクログリア活性、運動機能障害を抑制すると報告されている。このことは、cPA は炎症を抑制し、神経を保護することを示唆している。そこで、cPAのマウス脳穿刺傷害の修復過程に対するcPAの影響を解析している。

 

 

最近の主な論文

1.Kei Hashimoto, Natsumi Ikeda, Mari Nakashima, Hiroko Ikeshima-Kataoka, Yasunori Miyamoto “Vitronectin regulates the fibrinolytic system during the repair of cerebral cortex in stab-wounded mice” J. Neurotrauma (2017) in press.

2.Kei HASHIMOTO, Fumi SAKANE, Natsumi IKEDA, Ayumi AKIYAMA, Miyaka SUGAHARA, and Yasunori MIYAMOTO  “Vitronectin promotes the progress of the initial differentiation stage in cerebellar granule cells” Mol. Cell. Neurosci. (2016) 70: 76-85 

3. Yasunori MIYAMOTO, Mio TANABE, Kimie DATE, Kanoko SAKUDA, Kotone SANO, and Haruko OGAWA “Sialylation of vitronectin regulates stress fiber formation and cell spreading of dermal fibroblasts via a heparin-binding site” Glycoconj. J. (2016) 33, 227-236

4. Misa KONAKAZAWA, Mari GOTOH, Kimiko MURAKAMI-MUROFUSHI, Ayana HAMANO, and Yasunori MIYAMOTO. “The effect of cyclic phosphatidic acid on the proliferation and differentiation of mouse cerebellar granule precursor cells during cerebellar development.” Brain Res. (2015)1614: 28-37

5.Yasunori MIYAMOTO, Fumi SAKANE, Kei HASHIMOTO.  “N-cadherin-based adherens junction regulates the niche formation, proliferation, and differentiation of neuronal progenitor cells during development.” Cell Adh. Migr. (2015) 9:1-10

6. Fumi SAKANE and Yasunori MIYAMOTO “N-cadherin regulates the proliferation and differentiation of ventral midbrain dopaminergic progenitors” Dev. Neurobiol. (2013) 73, 518-529.

7.Rina KIHARA, Yoshinori KASASHIMA, Katsuhiko ARAI, and Yasunori MIYAMOTO.  “Injury induces a change in the functional characteristics of cells recovered from equine tendon” J. Equine Sci. (2011) 2257-60 

8. Kotone Sano, Yasunori Miyamoto, Nana Kawasaki, Noritaka Hashii, Satsuki Itoh, Misaki Murase, Kimie Date, Miki Yokoyama, Chihiro Sato, Ken Kitajima, and Haruko Ogawa "Survival of Hepatic Stellate Cell during Liver Regeneration is Regulated by the Changes in Glycosylation of Rat Vitronectin especially the Decreased Hypersialylation.  J. Biol. Chem., (2010) 285, 17301-17309.

9. Mianzhi TANG, J. Carlos VILLAESCUSA, Sarah X. LUO, Camilla GUITARTE, Simonia LEI, Yasunori MIYAMOTO, Makoto M. TAKETO, Ernest ARENAS, and Eric J. HUANG “Interactions of Wnt/β-Catenin Signaling and Sonic Hedgehog Regulate the Neurogenesis of Ventral Midbrain Dopamine Neurons” J. Neurosci. (2010) 30, 9280-9291

10.Mianzhi TANG, Yasunori MIYAMOTO, and Eric HUANG “Multiple Roles of beta-catenin in controlling the neurogenic niche for midbrain dopamine neurons" Development (2009) 136,2027-2038.

関連リンク/Related Links

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