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作田 正明(さくたまさあき)

2017年7月11日更新

作田 正明(さくたまさあき)

植物生理学

 チューリップの茎や葉は緑なのに、何で花は赤いのだろう? カエデの葉は秋になり寒くなると何で赤くなるのだろう? こんな素朴なハテナが私の研究の本質ではないかと思っています。大学の卒論以来、植物色素にかかわり、現在は主に赤や白の培養細胞を材料として、色素を始めとする二次代謝産物合成系の発現機構を、分化、環境応答といった側面から解析しています。また最近では、「動けない植物」の紫外線、病原菌さらには傷害といった環境ストレスに対する応答機構について興味を持っています。

 研究紹介

作田 正明(SAKUTA Masaaki)

作田 正明(SAKUTA Masaaki)
所属
人間文化創成科学研究科研究院 教授
担当大学院(教育院),学部
博士後期(博士)課程
   ライフサイエンス専攻 生命科学領域
  
博士前期(修士)課程  
   ライフサイエンス専攻 生命科学コース
  
理学部生物学科  
   機能生物学講座
主な担当授業科目(学部)

基礎生物学A、植物生理学II、環境応答学、植物生理学実習

主な担当授業科目(大学院)

植物環境応答学、植物環境応答学演習(前期)、生態環境応答、生態環境応答演習(後期)

専門分野

植物生理学(植物の二次代謝の発現調節機構)

所属学会等

日本植物生理学会、日本植物学会、American Society of Plant Biologists

研究室

理学部2号館402号室

E-mail(@ocha.ac.jp) sakuta.masaaki
研究室HP
http://www-p.sci.ocha.ac.jp/bio-sakuta-lab/

 主な研究課題とその紹介

(1) 防御遺伝子の転写調節機構の研究

近年、高等植物の遺伝子の転写調節機構の解明を目的として、多くの転写因子が単離され、その特性解析が行われている。そして現在のところ、特にリン酸化等の修飾による転写因子のDNA結合能の調節について新しい知見が得られつつある。当研究室では、病原菌感染時に植物で発現する防御遺伝子の一つであるchalcone synthaseの転写調節機構について、特にその転写因子に注目して研究を行っている。

ダイズのchalcone synthase(chs15)の転写因子であるG/HBF-1はリン酸化されることによりchs15のcis領域に結合する。このG/HBF-1のリン 酸化およびこれに続くDNAへの結合はCa2+により制御されることを見出し、G/HBF-1はCDPKによりリン酸化されることを明らかにした。 さらに通常、転写因子G/HBF-1は細胞質に局在しており、またその構造中にはCK2の推定リン酸化部位の近傍に核移行シグナル (NLS)様配列がみられることから、chalcone synthaseの転写時にはG/HBF-1が細胞質から核に移行する可能性を示唆し、実際CK2はG/HBF-1をリン酸化することを明らかにした。現在、上記の転写因子G/HBF-1の核移行、およびCa2+依存した転写調節の両者について、その機構の詳細について解析を行って おり、この両者が病原菌の感染から防御遺伝子の転写に至るシグナルカスケ-ド上で、どのように位置付けられるのかという点なども考えつつ研究を進めている。

(2) 植物遺伝子の多重性と転写ネットワークに関する研究

植物ゲノムの特徴の一つとして、遺伝子の多重性が挙げられる。マメ科植物ではフラボノイド合成に関与する酵素群は多重遺伝子族を形成しており、その背景には種々の要因に応答する複雑な転写制御ネットワークの存在が推察される。

近年、種々の植物において、フラボノイド合成に関与する転写調節因子(MYB、bHLH、WD40タンパク質)が単離され、特性解析がなされている。当研究室では、これまでにマメ科モデル植物であるミヤコグサより、プロアントシアニジン合成に関与するとされるシロイヌナズナのMYB型転写因子TT2のホモログLjTT2-1、-2、-3を単離し、これらがゲノム上でタンデムに配列し多重遺伝子族を形成することを見出した。3つのLjTT2はすべて、TT2と同様にシロイヌナズナのBANYULS (BAN)、dihydroflavonol 4-reductase (DFR) のプロモーターを活性化するものの、器官の違いやストレスの負荷に応じた発現パターン、TT8、TTG1との相互作用において三者の間で違いが見られることから3つのLjTT2はそれぞれ機能分化している可能性が示めされた。現在、これらの転写調節因子間の相互作用の解析を中心に、動くことができない植物の生存戦略において、その基幹をなす転写制御ネットワークの解明を目指して研究を進めている。

(3) 植物色素を指標とした分子進化の研究

高等植物の花色、紅葉などの赤色は、多くの場合アントシアニンがその発色源となっているのに対し、ナデシコ科、ザクロソウ科を除くナデシコ目植物の赤色はベタシアニンによって発色されている。さらにアントシアニンとベタシアニンが同一種に共存する例は報告されておらず、植物界における両者の分布は互いに排他的である。植物の化学分類においては、二次代謝産物が有効な形質の一つとして古くより用いられてきたが、その場合問題となるのは、基本骨格の水 酸化、配糖化、アシル化といった修飾パターンの多様性である。これに対し、ナデシコ目と他の植物の間で見られるような、アントシアニン、ベタシアニンのと いった基本骨格自体の存在の有無がはっきりとしている例は珍しく、この事実に対する「なぜ?」は古くからの問題であった。

近年、アントシアニン、ベタシアニンに関しては、生理・生化学、分子生物学的側面からの研究が極めて活発に行われており、特にアント シアニンをはじめとするフラボノイドの発現制御機構は最も研究が進んでいる分野の一つである。そこで本研究室では、こういった現状をふまえ「ナデシコ目はなぜアントシアニンを作らないのか」という問題にたいして、遺伝子レベルからのアプローチを試みている。

ナデシコ目の植物では、アントシアニンは存在しないものの、これと生合成上近縁なフラボン、フラボノール等のフラボノイド化合物は豊富に存在する。この事実は、ナデシコ目ではアントシアニン合成に特異的な生合成ステップが欠落していることを示している。そこでそのステップを触媒するDFR、ANSの両酵素に注目し、解析を行ってきた。その結果、ナデシコ目においても両酵素の遺伝子(DFR、ANS)が存在し、両者ともに機能を保持していることがin vitro、in vivoにおいて明らかとなった。

主な論文・著書とその紹介 

  • Yamagami, A., Chieko S., Sakuta, M., Shinozaki, K., Osada, H., Nakano, A., Asami, T. and Nakano, T. (2018)
    Brassinosteroids regulate vacuolar morphology in root meristem cells of Arabidopsis thaliana. Plant Signal Behavior 3:e1417722.

    Yamagami, A., Saito, C., Nakazawa, M., Fujioka, S., Uemura, T., Matsui, M., Sakuta, M., Shinozaki, K., Osada, H., Nakano, A., Asami, T. and Nakano, T. (2017)
    Evolutionarily conserved BIL4 suppresses the degradation of brassinosteroid receptor BRI1 and regulates cell elongation.  Scientific Reports 7:5739.

    Sameshima, N., Nishimura, M., Murakami, K., Kogo, Y., Shimamura, Y., Sakuta, M., and Murata, M. (2016)
    Cloning of phenylalanine ammonia-lyase and its role in enzymatic browning of mung bean sprout during cold storage. Food Science and Technology Research 22:255-260.

    Yasumura, Y., Pierik, R., Kelly, S., Sakuta, M., Voesenek, A.C.J.L. and Harberd P.N. (2015)
    An ancestral role for CONSTITUTIVE TRIPLE RESPONSE proteins in both ethylene and abscisic acid signaling. Plant Physiol. 169:283-298.

    Takahashi, K., Yoshida, K., Yura, K., Ashihara, H. and Sakuta, M. (2015)
    Biochemical analysis of Phytolacca DOPA dioxygenase. Nat. Prod. Com. 10:717-719.

    Takahashi, K., Yoshida, K. and Sakuta, M. (2015)
    Comparative analysis of two DOPA dioxygenases from Phytolacca americana. Nat. Prod. Com. 10:713-716.

    Yoshizawa, E., Kaizuka, M., Yamagami, A., Higuchi-Takeuchi, M., Matsui, M., Kakei, Y., Shimada, Y., Sakuta, M., Osada, H., Asami, T. and Nakano, T. (2014)
    BPG3 is a novel chloroplast protein that involves the greening of leaves and related to brassinosteroid signaling. Biosci. Biotechnol. Biochem. 78:420-429.

    Sakuta, M. (2014)
    Diversity in plant red pigments: anthocyanins and betacyanins. Plant Biotechnology Report 8:37-48.

    Bekh-Ochir, D., Shimada, S., Yamagami, A., Kanda, S., Ogawa, K., Nakazawa, M., Matsui, M., Sakuta, M., Osada, H., Asami, T. and Nakano, T. (2013)
    A novel mitochondrial DnaJ/Hsp40 family protein BIL2 promotes plant growth and resistance against environmental stress in brassinosteroid signaling. Planta 237:1509-25.

    Yin Y., Borges, G., Sakuta, M., Crozier, A. and Ashihara H. (2012)
    Effect of phosphate deficiency on the content and biosynthesis of anthocyanins and the expression of related genes in suspension-cultured grape (Vitis sp.) cells. Plant Physiol. Biochem. 55:77-84.

    Toda, K., Kuroiwa, H., Senthil, K., Shimada, N., Aoki, T., Ayabe, S., Shimada, S., Sakuta, M., Miyazaki, Y. and Takahashi, R. (2012)
    The soybean F3’H protein is localized to the tonoplast in the seed coat hilum.Planta 236:79-89.

    Sakuta, M. and Ohmiya, A. (2011)
    Plant Pigments II: Betacyanins and Carotenoids. In Plant Metabolism and Biotechnology
    (Ashihara, H., Crozier, A. & Komamine, A. eds.) 343-372. Wiley

    Yoshida, K., Iwasaka, R., Shimada, N., Ayabe, S., Aoki, T. and Sakuta, M. (2010)
    Transcriptional control of dihydroflavonol 4-reductase multigene family in Lotus japonicus.
    J. Plant Res. 123:801–805.

    Yoshida, K., Kume, N., Nakaya, Y., Yamagami, A., Nakano, T. and Sakuta, M. (2010)
    Comparative analysis of the triplicate proathocyanidin regulators in Lotus japonicus.
    Plant Cell Physiol. 51:912-922.

作田正明著書

  • ナデシコ目はなぜアントシアニンを合成しないのか ―アントシアニン生合成の進化― 植物の生長調節

共著

  • 植物バイオテクノロジーの新たなる挑戦 BIOINDUSTRY  22:5-8. (2005)
  • 植物分子細胞生物学 (共編)オーム社(2004)
  • 植物色素研究法 (共著)大阪公立大学共同出版会(2004)
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