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由良 敬(ゆらけい)

2016年6月13日更新

由良 敬(ゆらけい)

生命情報学

 生物の設計図が描かれているゲノム塩基配列がコンピュータの中に保存されている時代になりました。でもその「文章」の中に何が書いてあるのかが、なかなかわかりません。暗号化されているからです。細胞を構成しているタンパク質のかたちもどんどんわかってきています。でもその「ブロック」がどのようにして働いてるのかが、なかなかわかりません。小さくて巧妙にできているからです。コンピュータを使ってこれらの謎を解いています。すべての謎が解けたときには、コンピュータの中でさまざまな生命現象を再現することができるようになるでしょう。そのときがくるのを楽しみに、毎日コンピュータにむかっています。

研究紹介

研究内容

 当研究室では、研究室所有のコンピュータが持つ計算力と、教員・学生がもつ無限の想像力と根性で、以下のテーマの研究を展開します。テーマ群は、二つの軸から構成されています。一つの軸は生物学的な疑問を根底にし、既存の手法を用いて謎を解いていくテーマです。既存の手法がうまくいかない場合は、自ら新しい手法を開発する場合もあります。もう一つの軸は、技術的な問題を根底にし、既存の生命情報学手法の抜本的な改良や、新規手法の開発を行うテーマです。実際には、同一のテーマが両方の側面を持つ場合が多いですが、どちらかを主軸にしている場合が多いです。どちらを主軸にするかは、各自の好みで決まっていきます。教授は生物学的な疑問を根底にして、必要ならば技術開発もしています。

第1軸:分子生物学的問題 

  • 真核生物の転写後RNA修飾機構
    • スプライシング
      • スプライセオソームによるスプライシングの機構
      • イントロンの起源
        • ゲノム構造とタンパク質構造の関係
      • 選択的スプライシング
        • 選択的スプライシング産物の構造
        • 選択的スプライシングを受けるエクソンの選別機構
    • RNAエディティング
      • タンパク質への影響
      • RNAエディティング部位の選別機構
  • Deinococcus属がもつ放射線抵抗性(DNA損傷修復)機構の解明
  • Thermus thermophilusがもつ熱耐性機構の解明

第2軸:生命情報学の技術開発

  • 高精度ホモロジーモデリング法とモデル構造データベースの開発
  • 電子顕微鏡単粒子解析像からの原子分解能超分子構造導出法の開発
    • サブユニット相互作用面推定法の開発
    • サブユニット間相互作用に伴う構造変化の推定(GNM)
    • 低分解能超分子像へのサブユニット高分解能座標の自動当てはめ法の開発
  • 生体高分子間相互作用部位と相互作用構造推定法の開発
    • タンパク質ーRNA
    • タンパク質ーDNA
    • タンパク質ータンパク質
    • タンパク質ー低分子
  • RNAの高次構造予測の開発
  • DNA修復関連タンパク質のデータベース開発
  • タンパク質の構造からタンパク質の機能を推定する方法の開発

 上記すべてが同じペースで展開しているわけではなく、しばらく休止になっているテーマもあります。研究室のメンバーが増えてくれば、これらをすべて動かすこともできるでしょうし、新しいおもしろいテーマに取り組むことも可能になってくると思います。

 ほとんどのテーマは学外の研究者と協力して進めていますので、コミュニケーション力は大切です。特に異分野の方々との研究相談において、相手のいっていることを理解する力と、わからないことが何かを正しく伝える力、自分の研究を異分野の方にちゃんと伝える力が必須です。要するに、自分の価値観・世界観は、他人の価値観・世界観とは、多くの場合異なっていることを理解していることが大切です。

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