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化合物紹介

2018年9月10日更新

カリックスアレーン (Calixarene)

Calixarene

  カリックスアレーン(上図)は、複数個のフェノール単位をメチレン基で結合した環状オリゴマーである。その分子構造がギリシャ製の聖杯(calix crater)に似ており、芳香環の多核環状結合体(arene)であることから、このような名前がつけられた。環を形成するフェノール単位の個数をnで表している。
  1970年代後半に、Gutscheらは、塩基性触媒下でのp-t-ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮合反応を制御する方法を見いだし、カリックスアレーン四、六、八量体を1段階で合成することに成功した 1) 。これにより、カリックスアレーンを容易に、かつ安価に、そして大量に合成できるようになり、ホスト-ゲスト化学に広く用いられてきた。
  ホスト分子となるカリックスアレーンの内径の大きさを変えることで、とりこまれるゲスト分子の大きさも変化する。例えば、フェノール単位を8つ含むカリックス[8]アレーン誘導体はフラーレン類のうちC60のみをとりこむことができるため、特定の大きさのフラーレンを単離することが可能になった 2) (下図)。また、フェノール環に機能性官能基を導入することで、多様な機能を持つホスト分子へと応用されてきた。
  他にも、フェノール環をピロールに置き換えた”カリックスピロール” 3) やメチレンの炭素が硫黄になった”チアカリックスアレーン” 4) などに展開されており、多様な構造と性質をもつホスト分子が開発されている。
参考 :
1) C. D. Gutsche, Acc. Chem. Res. 1983, 16, 161-170.
2) Seiji Shinkai et al., J. Synth. Org. Chem., Jpn. 1995, 53, 963-974.
3) Vladimír Král et al., J. Am.Chem. Soc. 1996, 118, 5140-5141.
4) Mir Wais Hosseini et al., Tetrahedron Letters. 1998, 39, 2311-2314.

棚谷研究室 有村舞子)


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