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●キノコレクチンの多重結合特異性 multispecificity
菌類の中でも、キノコは不思議な存在です。何もない腐った土や枯れ葉の中からひょっこりと生えてくるように見えます。なぜかキノコには様々なユニークな特異性を持つ糖結合タンパク質(レクチン)が存在しています
3)
。真菌類の一種、担子菌類のムジナタケレクチン(PVL)は、糖鎖の非還元末端N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)に特異的な数少ないレクチンの一つで、生化学や病理学方面での糖鎖研究に、また臨床診断薬への有用性が期待されています。私達はPVLがGlcNAc結合部位と同じ部位でN−アセチル基を持つ他の糖、シアル酸
4)
などにも良く結合すること
1)
、またヘパリンやポリガラクツロン酸をはじめとする酸性多糖とも結合するが、これはGlcNAc認識部位と異なる部位での相互作用であることを見い出しました
2)
。すなわちPVLはmultispecificなレクチンで、この他ににも酸性糖脂質など様々な糖鎖を持つ生体高分子と結合できる性質を持っています。PVLが腐生菌であるムジナタケ生体内でどんな役割を果たしているのか、まだよくわかりません。しかし、他の真菌類である
Arthrobotrys oligospora
では、菌が線虫を捕食するときにmultispecificなレクチンが働いている可能性も考えられていました。このようなレクチンが自然界で寄生、腐生、共生を中心とした菌類の生態において重要な役割を果たしているのではないかと期待しています。
1)
Ueda H., et al.,
FEBS Lett.
, 448(1),75-80, (1999)
2)
Ueda H. et al.,
J. Biochem.
, 126(3), 530-537, (1999)
3)
Matsumoto H., et al.,
Biochem. Biophys. Acta
, 1526(1), 37-43, (2001)
4)
Ueda H., et al.,
J. Biol. Chem.
, 277(28),24916-24925, (2002)
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