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2013. 6.8 OUCA講演会

お茶大ワンゲル活動57年を通した先に
科学的視点で見えたヨーロッパアルプスの魅力


金原 富士子
S31年化学科卒
お茶の水女子大学ワンダーフォーゲル部創設メンバーの一人、いわひばり会(同部OG会)会員

 本邦初の女子大ワンゲルとして昭和29年設立以来50年活躍した我が部も世の趨勢には勝てず平成15年廃部となり、今は約200名のOG会が活躍中。アルプスへも登るうち、山容は岩の種類で決まると気が付き、地質学に興味が広がった。
 地球科学は最近革命的に進歩しつつある。高精度の質量分析計ができて元素の同位体比が精密に測れるようになり、地球や岩の年齢・昔の気温や海水準変動も正確に分かったし、地震波トモグラフィー画像から地球内部マントルなどの循環システムも分かり、プルーム(火柱)テクトニクスも発展した。
 46億年前に誕生した地球は一面マグマの海だったが、冷えるにつれ花崗岩の小さな島がいくつかでき少しずつ大きくなった。5億4千万年以前にできたこれらの陸の地下2〜300kmには地震波高速度域があり、大陸地殻を形成するマグマを大量に排出した残渣マントルの硬い層と見なされていて、その後の地殻変動を受けない安定大陸をなす。フィンランドはここに世界初の高レベル放射性廃棄物地下処分場を建設中。島々はやがて今の大陸サイズまで成長したあと面積も形もあまり変化しなくなった。これらの大陸はプルームの循環システムに乗って約4億年周期で離合集散している。
 3億年前の超大陸パンゲアが1億6千万年前から分裂し始め、大西洋が開き始め浅いテチス海も開いたが、1億年前にアフリカプレートが反時計回りに動いてテチス海が閉じ始めた。重い海洋地殻が陸の下に沈み終わり大陸同志がぶつかると、陸は軽くてマントルに沈み込めないのでアフリカ北部とアドリアプレートがヨーロッパプレートを押し、隆起・褶曲しアルプスができ始めた。決定的衝突は700万年前で、フランスやドイツの硬い山地に邪魔された西半分はさほどでなかったが、東半分はアフリカ地殻がヨーロッパ地殻の上へ薄く斜めに100km以上も乗り上げた。
 だからアルプスを大雑把に分類すれば、西半分が@硬いヨーロッパ地殻のモンブランやユングフラウ等の「中央山塊」、Aテチス海北岸の堆積岩でできたアイガー等の「ヘルベチア帯」、Bテチス海底のヨーロッパ地殻とテチス海堆積岩が一緒に隆起したモンテローザ等の「ペニン帯」、東半分がCヨーロッパ地殻の上にアフリカ地殻、その上にテチス海堆積岩を載せたドイツ・オーストリアアルプス(浸食により飛び地の形でBの中に取り残されたアフリカ地殻のマッターホルン等を含む)の「東アルプス」、Dアフリカ地殻の上にテチス海堆積岩を載せたイタリア・スロベニアアルプスの「南アルプス」。CとDの境はヨーロッパとアフリカの境で境界面はマントルまで達する。最後に氷河が仕上げ磨きをして美しいアルプスができた。

著書:
岳人講座C「秋山」東京中日新聞出版局 1965(共著)
ヨーロッパアルプス登山・ハイキング…ニースからウィーン
  4000m級から易しいコースまで310コース 本の泉社 2009 (改訂版 2010, 2013)