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桜化会(OUCA)は、お茶の水女子大学化学科・関連大学院の卒業生・修了生と現旧教員でつくる会です。

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2004.10. 2 OUCA講演会 「生活習慣病をめぐって」

―― 糖尿病 「一病息災」 ――


山岸 美和子
S33年化学科卒
岡崎市医師会公衆衛生センター 診療部長

 糖尿病は血液中のブドウ塘(血糖)が正常より高い状態が続く病気です。血糖値を下げてくれるホルモンは膵臓から分泌されるインスリンというホルモンだけです。日本人の糖尿病の 90%以上を占める2型糖尿病は「インスリンの分泌低下」と「インスリン抵抗性」という2つの因子が相俟って発病します。
 糖尿病人口は今急激の増加しています。「糖尿病が強く疑われる人」はこの5年間で50万人も増えて740万人になりました。「糖尿病の可能性が否定出来ない人」が200万人増えて880万人になりました。急増の主な原因は肥満にあると考えられています。脂肪の摂り過ぎと運動不足で体脂肪が増加するとインスリンが働きにくくなる(インスリン抵抗性)のです。
 糖尿病になっても初期には自覚症状がありません。しかし自覚症状がないままに放置すると、高い血糖がゆっくりとしかし確実に全身の血管に障害を与えて糖尿病特有の三大合併症(網膜症、腎症、神経症)と動脈硬化を進行させます。そして最終的には心筋梗塞や脳梗塞で命を縮めることになります。合併症も初期には自覚症状がないことが多いのです。突然の失明に驚いて眼科を受診して自分が糖尿病であることを初めて知った患者さんもいます。自覚症状がなくても健康診断などを受けて早期に発見して早期に治療しましょう。糖尿病の治療は血糖値の正常化がすべてです。糖尿病(疑い)といわれたらまずは食事療法と運動療法で肥満の解消をはかります。その結果インスリン抵抗性が改善されて血糖値が下がります。食事療法と運動療法だけで血糖が正常化しない場合には薬物療法(経口薬またはインスリン注射)の出番です。
 日本では「糖尿病が強く疑われる740万人」の50.6%しか治療をうけていないのが現状です。早期発見が早期治療(二次予防)に結びついていないのです。更に今求められているのは「糖尿病の可能性を否定出来ない880万人」が糖尿病にならない(一次予防)ための取り組みです。
 最後に糖尿病は自然に治る病気ではありませんが、糖尿病の検査を含む健診を受けて早期に発見して食事療法と運動療法に真剣に取り組めばかえって元気で長生きできる病気でもあるのです(糖尿病の一病息災論)。