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海外留学体験記

周藤 瞳美

ドイツ・ブッパタール大学へ
 私は平成22年度若手研究者ITPの研修留学に参加した。1セメスター(4ヵ月)のあいだ、現地の大学院生と共に授業を受け、単位を取得し帰国するというプログラムだった。私が4ヶ月間暮らすことになったのは、ブッパタールというドイツ西部のノルトライン=ヴェストファーレン州に属するルール地方の小さな都市だ。私はそこの中央駅からバスで5分程度のところにある、バーギシェ・ブッパタール大学というところにお世話になった。耳なじみのない名前の大学かもしれないが、100カ国以上もの国から留学生が集まる国際色豊かな大学だ。事実、私が住んでいた学生寮は様々な国から来た人で溢れていた。

日本とドイツの学生の違い
 平日は基本的に大学に行き、主に化学の授業を英語で受けた。まずはじめに驚いたのは、ドイツ人学生のレベルの高さだ。私たちが研究室のゼミで行うような専門的な内容の授業を、修士課程の学生全員が受けており、彼らは量子化学から有機合成化学、微生物学まで、分野を絞ることなく学んでいた。これらの内容に対する理解度も高いうえ、誰もが当たり前のように英語とドイツ語の二ヶ国語を流暢に喋っていた。
 さらに驚かされたことは、ドイツの学生の博士号取得に対する意識の違いだ。お茶大化学科においては、博士課程へ進学する学生は年に2,3人といったところだが、ブッパタール大学の博士課程進学率は化学科で9割以上だそうだ。学生に話を聞くと皆、将来研究者として企業で働くことを目指しており、そのためには博士号が必須だという。修士卒と博士卒では、待遇も驚くほど異なるらしい。これに対し、日本では博士号取得者の就職難が叫ばれており、企業の研究職に就くとしても、大半の人が修士課程修了の時点で就職してしまうのが現状だ。ただ、海外で研究者として働いてくためには、博士号を持っていなければ話にならない。「博士」に対する意識の差があることは知ってはいたものの、実際にドイツの学生に話を聞くことで、日本との違いを改めて痛感した。

ドイツでの生活
 週末や授業の入っていないときは、現地で出会った友人たちと交流したり、近隣諸国へ旅行に行ったり、ビールを飲んだりしていた。「ドイツでは、ビールは水より安い」と冗談のように言われるが、これは事実だ。ペットボトル入りのビールだと6本入りが2ユーロ弱で購入できる。日本円に直すと、500ml一本あたり40円程度。さらに、お店にペットボトルを返却すると、ビール代金の半分近くが返金される。このようなシステムは、さすが環境大国ドイツといったところだろうか。ブッパタールはビールだけではなく、物価自体も安かったので、寒いことを除いてはとても暮らしやすい街であった。

ドイツ留学を終えて
 留学前と比べて変化したこととして、英語に対する強い苦手意識が改善されたことが挙げられる。おそらく、無理に完璧な英語を使おうとしていたのが、私の苦手意識の原因だったと思う。しかし、コミュニケーションを取る際に大切なのは、決して流暢に英語を喋ることなどではない。ブロークンイングリッシュでもボディランゲージでも何でも良いので、とにかく自分の考えをしっかり伝えようとする熱意、また相手の言いたいことを理解しようとする努力が何より重要なのではないだろうか。日本語でだって同じだ。そう考えるようになってからは、他国の人とも臆することなくコミュニケーションを取れるようになった。
 そして、この留学を通して得られた何よりの財産は、ありきたりではあるが、現地の学生や他国の留学生、旅先で仲良くなった方たちなど海外に住むの人々との出会いだと思う。様々な国籍の人たちと交流することにより、私がこれまで抱いていた「海外」に対する価値観が大きく変化した。「日本人だから」「アジア人だから」といって、パーティやお店で無視されたこともあった。「日本人だから」といってとても親切にしてくれた人もいた。だけど、日本人だから?ドイツ人だから?そうではないと、私は思う。どこの国の人だって、良いひとは良いひと、嫌なひとは嫌なひとなのだ。これからは、「私は日本人だから」「あなたはドイツ人だから」などという考えを捨て、ひとりの自律した人間として自分の考えを持ち、国籍を問わず様々な人と付き合っていきたい。また、彼らの多様さは国籍だけではなかった。子供を産んでから、再び大学へ戻ってきた人。海外で起業することを夢見ている人。海外で研究者としてやっていこうとしている人。様々なバックグラウンドを持つ人たちと出会った。人生にはなんと多くの選択肢があることだろう。「日本での就職活動がうまくいかなかったらどうしよう」などと考えていた、ちっぽけな自分を恥じた。今後も海外に行くチャンスがあればきっと喜んで飛んでいくだろうし、もっと大きなチャレンジをしてみたいとも考えるようになった。
 まだまだここには書ききれないほど、4ヶ月間のドイツ生活を通して非常に貴重な経験をすることができた。末筆ながら、この留学生活を支えてくださったたくさんの方々に感謝の意を表したい。


編集注) ドイツでは、以前は学位として、年数的に日本の修士号に相当するDiplomとMagister Artium、及び博士号を用いていて、学士号(Bachelor) と修士号(Master)という分類は存在しませんでしたが、1999年のヨーロッパにおけるボローニャ宣言の採択以後、各国共通で比較可能な学位制度(学士号、修士号、博士号)が導入されるようになりました。導入は、従来制度との併存期間を含めて、10年くらいをかけて実施されています。 従って、修士号についてドイツでは過渡期であることと、修士課程の内容も日本とは異なっていることを、ご参考のため書き添えます。

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