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ホップ・ステップ・ジャンプモデルを通しての成長

梅澤 規子

 私の博士後期課程進学とともに、若手研究者インターナショナル・トレーニング・プログラム(ITP)が始まり、ホップ・ステップ・ジャンプモデルのホップの段階としてドイツ・ブッパタール大学で4カ月の研修留学を、ステップの段階としてオーストリア・ウィーン工科大学で1年間の研究留学を経験させていただいた。
 この留学の機会を与えていただくまで私の海外経験は一度旅行したくらいであり、ブッパタール大学へ研修に行った時は不安ばかりが大きく、うまくやっていける自信もなかった。そんな私がなぜ留学を希望したかと言えば、大学院へ進学し研究を進めていく上で、英語が読み書きできるだけではいけないと感じていたからである。国際学会での発表の機会や外国人研究者の講演へ参加する機会などが増え、自分の英語のスピーキング・リスニング力の低さにもどかしい思いをすることが度々あった。また、多くの企業が外国へ進出しているように、研究者もグローバルに活躍して行く時代であると感じていたからである。実際のドイツでの生活は、言語はもちろん生活文化・気候などあらゆる面で日々驚きと苦労の連続であった。しかし、異国の文化や国民と生活をすることで、化学だけではなく多くのことを学べたと実感する。また、これまで受験のために学習しなければならないという意識であった英語は、英語が使えることで自分の活躍できる世界が格段に広がることを実感した後は、自ら英語の勉強に励むようになった。

冬のブッパタール大学


ブッパタール大学から見える風景

 ドイツでの研修を通し多くの刺激を受けた私は、次に1年間の研究留学をウィーン工科大学のFriedbacher教授の元で過ごした。研修留学と違い、どんな時も自分の力で解決していかなければならない環境は大変ではあったが、その分成長も大きかったと感じる。日本の大学の研究室では、先生や先輩方からテーマを与えられたり、実験を指示されたりすることがあるかと思うが、外国では全てが自ら行動しない限り何も指示されず、何もアドバイスされないようである。いわゆる「自由」に研究を進めてよいということなのだろうが、この自由な生活に慣れるのには少し時間がかかった。最も大変だと感じたことは、常に自分の考えや意見を述べなくてはいけないことである。自由に研究を進めてよいので、実験する前に自分で立てた計画を元に先生とディスカッションをするのだが、どうしてそれをやるのか、それをやると何が分かるのか、他に良い方法はないのかなど、先生を納得させられるだけの自分の考えをまとめなければいけないのである。時に自分の考えと違うアドバイスをいただくこともあるが、自分の意見を否定されているわけではないので、自分なりの根拠があればそれを実行させてくれる良い研究環境であったと思う。言い換えればどんな意見でも気兼ねなく発言できる環境であり、慣れてしまえば楽に感じた。先生がおっしゃった「決めるのは自分だよ」という言葉が今も強く印象に残っている。また、研究室間の垣根も低く、使用したい装置や試薬など他研究室にお邪魔して貸していただくこともよくあった。そのおかげで、研究を進めていくと必然的に交流のネットワークが広がることになり、他研究分野の先生方ともお話できる機会が多く、知的好奇心を満たすには非常に楽しい環境であった。さらにユニークと感じたことは、先生方が化学の専門家というだけではなく、それぞれ多彩な趣味をお持ちであり、仕事も趣味も充実した生活を送っているということである。大学の先生方で編成されたオーケストラの演奏を楽友協会に鑑賞しに行ったこともある。
 これら留学を通してコミュニケーション力について考えさせられた。外国で生活するにはまず英語力がなければ他者と会話することもままならないが、とはいえ英語ができればコミュニケーション力が高いのかというと必ずしもイコールではないと思う。日本から突然やってきた私を快く迎え入れ、生活をサポートして下さったFriedbacher先生をはじめとした大学の先生方がいらしたおかげで私は充実した留学生活を送れたのであり、コミュニケーションのためにはまず他者を受け入れる寛容性が必要であり、そして相手を理解し、また自分のこともよく知ってもらうことが大事なのではないかと感じた。留学前は視野が狭く、自分の興味関心事以外には疎い私であったが、留学を通し、一歩外に踏み出すことでまたそこから多くの交流が築けることを知った今は、自分で視野を狭めることなく、広く色んなことに興味関心を持つように心掛けている。そういう点で、異文化の中で生活をする留学はコミュニケーション力を鍛えるには非常に良い機会であり、留学を考えている学生はチャンスがあるならば臆せずチャレンジしてもらいたいと思う。臆した私はだいぶ学年を重ねてから海外経験を積むことになったわけだが、外国での経験は早ければ早いほど将来の選択肢がどんどん広がるのではないかと思うからである。



ウィーン工科大学


実験室の風景


楽友協会にて

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