研究概要


4)分子配列制御と固相反応


 有機結晶の分野では、結晶場において分子の配列をいかに制御するかが重要な課題となっています。これは、結晶の性質が、分子の配列様式の違いによって大きく異なるためです。従来、水素結合、ハロゲン結合、CH-π、π-π相互作用が、この目的のために利用されてきました。我々は、カチオンーπ相互作用が分子配列制御に有効であると考え検討を行っています。

 (1)で述べましたが、ピリジン環をピリジニウムに変換するとカチオン-π相互作用が働くことで、コンホメーションが結晶中においても変化することがわかりました。一方、スチリルピリジン類では、分子どうしの配向が大きく変化します。ピリジニウム塩に変えることで、head-to-tail型の配列を取ることを見出しました。これらの性質は(3)で述べた固相光付加環化反応に利用しています。また、スチリルピリジン塩酸塩は水和物を生成します。この水分子は脱水和-水和過程が可逆であることも明らかにしました。アザカルコン類の光二量化反応についても(3)で述べましたが、アザカルコン類に塩化水素を曝露すると結晶中で塩酸塩が生成し、カチオン-π相互作用により結晶場でhead-to-headからhead-to-tail型に配列が変化することを見出しました。このように、分子配列がカチオン-π相互作用により支配されることは普遍的現象として観測されることを明らかにしました。




関連論文

  1. Yamada, S.; Morita, C. J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, 8184-8185.
  2. Yamada, S.; Morimoto, Y.; Misono, T. Tetrahedron Lett., 2005, 46, 5673-5676.
  3. Yamada, S.; Morimoto, Y. Tetrahedron Lett., 2006, 47, 5557-5560.
  4. Yamada, S.; Tokugawa, Y. J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 2098-2099.
  5. Yamada, S.; Kawamura, C. Org. Lett., 2012, 14, 1572-1575.
  6. Yamada, S.; Nojiri, Y. Chem. Commun., 2011, 47, 9143-9145.
  7. Yamada, S.; Tokugawa, Y.; Nojiri, Y.; Takamori, E. Chem. Commun., 2012, 48, 1763-1765.
  8. Yamada, S.; Katsuki, A.; Nojiri, Y.; Tokugawa, Y. CrystEngComm, 2015, 17, 1416-1420.
  9. Yamada, S.; Sako, N.; Yamada, K.; Deguchi, K.; Shinmizu, T. CrystEngComm, 2015, 17, 5629-5633.


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