トップイメージ 桜化会(OUCA)は、お茶の水女子大学化学科・関連大学院の
卒業生・修了生と現旧教員でつくる会です。
トップイメージ

桜化会(OUCA)は、お茶の水女子大学化学科・関連大学院の卒業生・修了生と現旧教員でつくる会です。

TOPページ
問い合わせ先

TOP卒業生の声>未来に希望を繋げる仕事〜教員のすすめ


未来に希望を繋げる仕事〜教員のすすめ
(平成22年5月掲載)


大内 まどか
私立鴎友学園女子中学高等学校教諭・広報部長

photo2
photo2
 私は現在、東京にある私立の女子校で理科に携わっています。しかし、大学入学当初から将来の職業として教員を考えていたわけではありませんでした。
 理科教員を目指そうと考えたのは、大学4年生のときに所属した研究室の指導教授の影響です。当時は、子どもたちの「理科離れ」が深刻化し、理科実験を指導できない教員や、学習指導要領における理科の授業数削減など、日本の理科教育の貧困さが浮き彫りになりつつある時代でした。しかし、時代はバブル経済の真っただ中でしたので、優秀な学生は文系も理系も皆企業に流れ、教員の層がどんどん薄くなることが危惧されていました。私の指導教官であった先生は、この状況に危機感を持ち、先陣に立って発言していらっしゃいました。研究室で先生から伺った、理科教育にかける熱い思いと危機感が、私の人生を決めたと言っても過言ではないと思います。
 もう一つのきっかけは、お茶の水女子高等学校での教育実習でした。教育実習での指導教官は、同じ化学科の先輩でした。先生の指導は的確でかつ温かく、学生の個性と指導力を十分に引き出してくださるものでした。教員として尊敬できる方が同じ学科の先輩だったこと、そしてその指導に感銘を受けたことも、私が教員を志した理由の1つとなっています。
 現在私が勤務している私立鴎友学園女子中学高等学校は、創立以来理科教育にとても力を入れている学校です。中学では実験中心のカリキュラムが組まれており、また高校では発展的な探求活動も行っています。そのため、教員には幅広い知識と様々な実験の指導力が求められます。私は大学時代理論化学を専攻していたため、学生実験は3年生までしか行っておらず、実験がそれほど得意な学生ではありませんでした。しかし、はじめて教師として鴎友の教壇に立ったときも、実験の指導で困ることはありませんでした。おそらく、お茶大の化学科が20人という少人数であり、実験実習では先生方が学生一人ひとりをきめ細かく指導してくださったので、知らず知らずのうちに実力がついたのだと思います。
 理科教員になってから、お茶大で学んでよかったと特に思えるのは、女子だけの環境で化学や物理の専門教育を受けることができたということです。私は学校の広報を担当していますので、公立・私立を問わずいろいろな学校の先生方や、様々な業種の方々とお話しする機会があります。その中で強く危機感を感じるのは、「女子は理数、特に物理が苦手」という、もはや神話のような偏見が、相変わらずまことしやかに語られている事実です。もちろん、共学の学校にも、実力を十分に発揮している優秀な女性は数多くいますし、指導力のある先生方も沢山いらっしゃいます。しかし、「これは女子には難しいのではないか?」という先入観の下で、女子生徒、女子学生が自分の進路選択に自ら制限をかけてしまうケースも現実には存在します。私の場合、高校までずっと公立の共学校で過ごしましたので、大学で女子教育に出会えた経験はとても大きかったと思いますし、現在私が女子校での理科教育にこだわり続けているのも、お茶大で受けた教育が根幹にあるからだと思います。
 教員にはいろいろな仕事があります。私は広報部長という立場ですので、学校の広報が仕事の多くを占めています。しかし、それ以外にも化学の授業を担当し、高3の授業担当者として理系の進路指導もしていますし、クラス担任や部活動の顧問もしています。教員は、授業さえしっかりできればよいというわけではありません。自分の学校を知り、他の先生方の仕事を知り、互いの意見を交換し合い、自身も研修を積んで、よりよい教育を目指すことが求められています。そして、学校の広報というのは、そういった先生方の努力や、生徒たちのがんばりにスポットライトをあてて、学校の良さを受験生やその保護者に知っていただく仕事です。忙しさはありますが、自分たちの仕事が直接学校の発展に貢献できるという、充実感の持てる仕事でもあります。
 今、新聞やニュースなどでは、学校現場の大変な部分にばかり目を向けた報道が目立ちます。しかし、多くの教員は、決して後ろ向きの気持ちで働いているわけではありません。特に中高の教員は、人間の原点となる思春期に関わり、将来様々な分野で活躍する人材を育てる、つまり未来に希望を繋げる仕事をしています。これから社会に巣立っていく意欲のある若い人たちにも、ぜひ教職を将来の職業の選択肢の1つとして考えてほしいと願っています。
photo

(大内まどか様ご紹介)
S63年3月 卒業
H3年3月 修士課程修了
H3年4月 鴎友学園女子中学高等学校 非常勤講師
H4年4月 鴎友学園女子中学高等学校 専任教諭
現在は、鴎友学園女子中学高等学校 広報部長
一男一女の母、趣味は愛犬(ジャック・ラッセル・テリア)の散歩とドラム