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化学科アーカイブ
●林太郎先生
女性自然科学者育成に貢献された故林太郎先生の小冊子『湖南の春』ー東京女子高等師範学校からお茶の水女子大学へ移行期の化学科と短歌ー(pdf 957KB)
●立花太郎先生
「立花 太郎先生インタビュー」日本化学会 化学遺産委員会 化学語り部第2回(pdf 2.7MB)
「夏目漱石の『文学論』のなかの科学観について」化学史研究 1985, No.4 pp.167-177(pdf 2.0MB)
「お茶の水女子大学附近の科学史散歩」(pdf 490KB)
●黒田チカ先生
黒田チカ先生の生涯と研究(pdf 1.3MB)
前田侯子「黒田チカ先生の生涯と研究」を転載するにあたって(pdf 5.8KB)
●前田侯子先生
前田侯子先生最終講義(pdf 301KB)
前田侯子先生の最終講義をホームページに載せるにあたって(pdf 19KB)
●阿武喜美子先生
阿武喜美子先生最終講義(pdf 4.7MB)
阿武喜美子先生の最終講義をホームページに載せるにあたって
先生の最終講義は1975年3月でしたからもう35年も前になります。当時はパソコンなどのない時代で、スライド作りを瀬野信子先生(元理学部化学科教授)や研究室の学生の人達とお手伝いしたのをおぼえています。講義は学生に対する授業とは違って大変くつろいだ雰囲気で、終戦前後の困難な時代やアメリカ留学時代の珍しい写真を見せて下さり、また複雑な複合糖質の研究成果の発展をパズルを解くようにわかり易くお話し下さって、会場一杯の聴衆は先生と共に楽しいひとときを過しました。
阿武喜美子先生は1910年山口県のお生れで、恵まれた家庭環境のもとで、先生のお言葉によれば、男女には差別をつけないお考えの、医師であるお父様と、信仰深い、慈愛にみちたお母様に育てられ、東京女子高等師範学校を卒業後当時女性にとってはめずらしかった大学教育を東京文理科大学化学科(当時女性に門戸を開いていた3大学のうちのひとつ)で受けられました。その後さらに、この最終講義でも話された様に、女性であるための障害を乗り越えて東京帝国大学の大学院に進まれ女性大学院生第一号となられました。先生は大学院修了後1941年から1975年の御退官まで30年余り女高師からお茶の水女子大学への変遷を通じて化学科の教官として後進の教育と研究の指導に生涯をつくされました。先生の御活躍は研究室内だけにとどまらず、国内だけでなく国際的にも先生の複合糖質に関する研究は注目をあびておりました。
また先生は高等女子教育の発展を生涯の目標とされ、特に新制大学への移り変りの際の国立女子大学の発足とお茶の水女子大学の大学院の設置には大変な努力と情熱を注がれました。先生無しには、お茶の水女子大学はここまで発展することはなかったかもしれません。
終りに、阿武先生の御退官記念に瀬野先生が中心になって「阿武先生と生物化学研究室の歩み」が出版されました。その中には、この最終講義だけでなく先生が様々の機会に書かれた興味ある随想や、教え子、同僚からの先生へのあたたかい言葉などがおさめられています。機会がありましたら一読していただければ先生もきっとお喜びのことと思います。
川合由美子(元生化研助手、昭35化卒)