トップイメージ 桜化会(OUCA)は、お茶の水女子大学化学科・関連大学院の
卒業生・修了生と現旧教員でつくる会です。
トップイメージ

桜化会(OUCA)は、お茶の水女子大学化学科・関連大学院の卒業生・修了生と現旧教員でつくる会です。

TOPページ
問い合わせ先

TOP講演会>サイエンスを社会実装するキャリア:研究+URA→起業のリアル

ホームカミングデイ2026 化学科・桜化会OUCA共同企画講演会

2026年 5月30日(土)

サイエンスを社会実装するキャリア:研究+URA→起業のリアル


天野 麻穂
H7年化学科卒・H9年修士課程修了
HILO株式会社 代表取締役

私は、お茶の水女子大学理学部化学科および大学院修士課程を修了後、東京大学大学院で博士を取得し、海外での博士研究員、私立大学教員、国立大学特任教員、URA (University Research Administrator)を経て、2021年に医療系スタートアップであるHILO株式会社を創業した。本講演では、研究者、URA、起業家という一見異なるキャリアがどのようにつながり、結果的に「サイエンスを社会実装する」取り組みへと発展したのかを紹介した。

お茶大の研究室(生物化学研究室、指導教員は小川温子先生)で学んだのは、研究に大切なことは「科学的思考+気合いと根性+体力」ということである。今にして思えば、これらは実は、研究に限らず何を成し遂げるうえでも不可欠なことではないだろうか。

その後、研究者としての経験を通じて身についたのは、問いを立て、仮説を構築し、検証を繰り返しながら課題解決を進める力である。また、国内外の研究活動を通じて、多様な価値観や背景文化の異なる人々と協働する重要性を学んだ。

その後、北海道大学でURAとして活動し、研究戦略の企画、異分野連携の推進、研究広報、起業支援などに携わった。研究成果が社会に届くまでには、異分野の研究者、企業、行政機関、支援者が関与しており、それぞれが異なる立場や価値観を持っていることを実感した。また、研究成果を社会実装するためには、優れた研究成果そのものだけでなく、適切な事業戦略やコミュニケーション、プロジェクトマネジメントが不可欠であることを学んだ。

URA時代に出会った「光診断薬」の研究シーズは、患者ごとに最適な分子標的薬を選択することを目指す革新的な技術であった。しかし、その価値を理解しながらも事業化を担う主体が存在せず、この技術を患者さんに届けるためには自ら起業する必要があると考えた。こうしてHILO株式会社を設立し、現在は、臨床検査と創薬支援を通じた光診断薬技術の実用化に取り組んでいる。

振り返ると、研究者として培った科学的思考力と意思決定力、URAとして培った俯瞰的視点や多様な関係者との協働経験は、現在のスタートアップ経営に直結している。キャリアは必ずしも一直線ではない。しかし、異なる経験を重ねることで視野は広がり、新たな価値創造につながる。本講演が、研究を軸にしながら多様なキャリアを考えるきっかけとなったなら幸いである。