研究概要


 私の研究室では、「有機分子の立体配座制御と選択的合成反応の開拓」をテーマに研究を進めています。簡単に言うなら、「有機分子を自在にあやつり、どのようにして欲しい構造の分子を創り出すか」を研究しています。研究の分野でいうなら、「合成有機化学」、「構造有機化学」に該当します。


 有機分子の立体選択的合成法の開拓は、現在でも有機合成化学の分野における重要な課題の一つであり、新しい概念に基づく新手法の研究は必要不可欠のものです。私たちは、新しい有機分子の立体配座(コンホメーション)の制御方法やシステムを研究し、それを基盤として選択的な新しい合成反応を創り出そうとしています。分子の動きや形をコントロールして、その状態から反応を行うと、今までとは異なる選択性が生まれて来ると考えられるからです。


 我々の研究室では、タンパク質の折りたたみ構造や種々の生化学反応において重要な役割を果たしているカチオンーπ相互作用に着目し、20年程前から低分子有機化合物の立体配座制御や分子間配向制御への利用を行っています(総説:有合化,2005,63,339; Org. Biomol. Chem. 2007, 5, 2903; Org. Biomol. Chem. 2011, 9, 7257; Chem. Rev. 2018, 118, 11353)。


 


カチオンーπ相互作用を利用した立体化学制御に関する主な研究テーマは以下の5つです。

1)カチオンーπ相互作用を利用する面選択的反応

2)立体選択的[2+2]光付加環化反応

3)新規有機触媒の開発と利用

4)分子配列制御と固相反応

5)新規分子天秤の合成と分子スイッチへの利用



ほとんどの研究は基礎的なものですが、以下のような領域で役立つことも期待されます。

(ⅰ) 位置および立体選択的合成

(ⅱ) 新しい構造や性質を持った分子の創製

(ⅲ) 生理活性化合物の創製


以下、上記の5つのテーマについて簡単に紹介します。


《NEXT》… 1)カチオンーπ相互作用を利用する面選択的反応



TOPへ戻る